お知らせ(ジュニア冒険小説大賞)

選考経過

大賞 「おでん町探偵・Wナンシー」小路すず
佳作 「神サミット2016」安井やくし

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受賞の言葉

大賞

「おでん町探偵・Wナンシー」小路すず

【受賞の言葉】
創作活動を本気で始めて3年。あれこれ書いては投げ出し、何を書けばいいのかわからなくなったときに思い出したのが、子供のころ夢中で読んだ江戸川乱歩の少年探偵団シリーズでした。 「そうだ、わたしってホントはこういうのが一番好きなんだよなぁ」と思い、自分の原点に帰るつもりで書いた初の探偵小説。この作品でスタートラインに立てたことに運命を感じます。 大人も子どもも読めてドキドキわくわくする、そんな楽しい小説を書き続けていきたいと思います。

佳作

「神サミット2016」安井やくし

【受賞の言葉】
この度は、佳作に選んでいただきありがとうございました。審査員の先生方、岩崎書店の皆様に心より感謝を申し上げます。 あの『ルルとララ』や『ペネロペ』の岩崎書店様から栄えある賞をいただけるとは、夢にも思いませんでした。どちらも娘の大好きなシリーズで、本棚の一番目につく場所に並んでいます。 まだまだ作品を書き始めたばかりですが、この受賞を糧に、もっと魂にひびくお話が書けるよう精進して参りたいと思います。

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「ジュニア冒険小説大賞」は、今年で第15回目を迎えた。毎年開催していたものが、今回を最後に隔年となる。それによって応募者傾向や作品の質がどのように変わっていくのかは想像できないが、これまでの大賞受賞者でデビューを果たし、着実に作家としての道を歩んでいる方もいることを考えると、今後も質の高い応募作品を期待したい。ちなみに佳作受賞者でも他で大賞を受賞され、世に出ている方がいる。このジュニア冒険小説大賞の受賞者と並んで、児童書の世界を盛り上げてくれることを願ってやまない。

今回は歴代第6位、99編の応募総数だった。全体的な傾向としては、SFらしいものはあまりなく、ミステリー、ファンタジーが多かった。この賞が始まって以来、なぜか「和風」なファンタジー作品が多かったが、リアリズムが入ってくるなど、バラエティが出てきた。

また、従来多かった純粋な「児童文学畑」の応募者だけではなく、脚本家やコピーライターなど、言葉の仕事をしている方の応募がいくつかあったことも印象的だった。ステレオタイプではなく、今を生きる子どもたちに喜んで読んでもらえる、いきいきとした物語を紡いでくれる方たちの参入は大歓迎である。

一方で、児童文学を書き慣れ、応募慣れした方の作品が、新たな挑戦者たちのような評価を得られない。これまでに何度もあったことだが、この傾向は続いている。選考には残るのにその先に行けないのはなぜなのかを考え、突破口を見つけてもらいたい。

第一次選考は、例年通りすべての作品を対象に行われ、次の12作品が通過した。

「切手の王国ベル」 さと ようこ
「赤ちゃんは名探偵!」 葵日向子
「ハーブ・クエスト ~ハロウィーンの香草曲」 瑞紀
「神サミット2016」 安井やくし
「るるるる、ぱられる」 林けんじろう
「魔法航海士ととらわれの竜の姫」 うたた かんきつ
「三味線ブルース」 松下好美
「伝えて、花色氷」 真風月花
「真夜中の海を歩けばいいさ」 周防まひろ
「ブルーナイト・パーティー」 太月よう
「おでん町探偵・Wナンシー」 小路すず

この12作品を対象に第二次選考を行った。

前述のようにバラエティに富んではいるが、この賞のグレード(対象年齢)を無視していたり、書き手の趣味の世界(マニアック)を全面的に展開しているものも少なからずあった。また、この賞は「四百字詰めで換算しての枚数を明記」としており、書式設定は自由だが、字間が空きすぎていたり、逆に字や行が詰まりすぎていたり、読みにくいのもあった。変換ミスなのか、誤記誤植が目立つものも。

つまり、読み手を意識していないものが多いのだ。自分の書きたいものを書きたいように書いて、「思い」とともに勢いで送ってきても、そこには「受け取る人」がいることを忘れないでほしい。

わたしたちは開封して、ひとつひとつの作品を読んでいく。こちらのことを考えていないとわかる作品には、どうしてもマイナス感情が生まれる。一事が万事であり、これはプロになってからも同じだ。ひとりよがり感がぬぐえない作品を書き続けていくのは(そうした書き手を支えていくのは)現実的に難しい。

選考の結果、次の6作品が残り、最終選考会が行われた。

「赤ちゃんは名探偵!」 葵日向子
「神サミット2016」 安井やくし
「真夜中の海を歩けばいいさ」 周防まひろ
「ブルーナイト・パーティー」 太月よう
「<神の子>」 木村 文
「おでん町探偵・Wナンシー」 小路すず

「赤ちゃんは名探偵!」赤ちゃんと小学生の姉が探偵になって問題を解決する物語。赤ちゃんの存在はユニークだが、生後1歳にもならない彼女にどうして知識や語彙、世間知もあるのか、それが最大の疑問。また、小学生が赤ちゃんの世話をしている、というのも現実的にはありえず、別の問題が生まれる。姉妹のやりとり、テレパシー、コミカルな要素、テンポなどはなかなかいいので、詰めの甘さだけが惜しい。本業が脚本家ならではの良さがある。そんな作者の個性を生かした自由な作品を今後期待したい。

「神サミット2016」神社の狛犬が一定時間本物の犬となり、主人公は各地の神社に神サミットの開催を知らせにいく。同級生とのやりとりもほほえましく、楽しくて読後感もよい作品。しかし、字間の空いたレイアウトは読みにくい。また登場人物の苗字がやたらと難しかったり、名前が途中から変わったりするなど(文字変換ミスか)、いろいろな配慮がもう少しほしかった。タイトルの「2016」にも違和感がある。今年、伊勢志摩サミットがあったからかもしれないが、この作品が大賞を獲るとしたら世に出るのは「2017」年である。本文中にある「神サミット大作戦」でよかったのでは。神様を集めるまでがたいへんで、その後は案外あっさりしているのは、納得はできるが尻すぼみにも感じられた。

「真夜中の海を歩けばいいさ」文章はうまく、テンポよく読ませる。これはなかなかすべての書き手ができることではなく、才能を感じさせるが、この作品のテーマである「自殺」はどうしたものか。軽妙なロードムービーのような展開で、死ぬのは思いとどまるのかと思いきや、失敗に終わったといっても実際に決行したというのは、あまりにも重い。また他の最終選考作品もそうだが、細かいところで「?」が多い。「今年11歳になる六年生」、豚が「ビフテキ」になるとか。登場人物の勘違いだとしても、何らかのフォローはしてほしい。母親たちが類型的なのも気になる。読ませる力はあるので別のテーマで細心の注意を払って組み立て、また挑戦してほしい。

「ブルーナイト・パーティー」常連的に応募してくれる方の作品。草原に真っ黒な巨船、パラレルワールドなど、イメージが喚起されるが、世界観が伝わりきらないことが残念。細部をもっと丁寧に描いてほしい。また数字的におかしかったり、科学的な要素は現代の常識を踏まえてほしいと思う点があった。フィクションだからこそ、正確に書いてほしい。児童文学らしさは大事だが、大きなテーマとして「環境問題」を持ってくる必要はなかったのでは? 作者の持ち味である児童文学の枠に収まらない自由さ、スケールの大きさで、次の作品を書き上げてもらいたい。

「<神の子>」まだ若い書き手であるが、これだけ長い物語を書き上げたことは賞賛に値する。しかし、肝心の<神の子>が大事にされる理由や村の様子、外界を全く知らずに育った主人公が、戸惑わず、迷わず逃走劇ができるのはなぜなのかがわからず、話に乗っていけない。ゲームの世界ならいいのかもしれないが、約束事の説明だけされているのが続くと辛い。才能は十分感じるので、足腰を鍛えて、また一から新しい作品に臨んでほしい。

「おでん町探偵・Wナンシー」探偵ものとしてやや既視感はあるが、読者年齢から考えると、気にしなくてもいいのかもしれない。何より説明くさくないのが特筆に価する。先に進むにつれて状況がわかるようになっているのがうまい。読者を楽しませながら書いている。読者の年齢層を考えていて、途中で語られる「死」は大事な要素、という設定も巧み。伏線をきっちり拾っているところもいい。会話も自然でこなれている。一般的な「冒険」のイメージはないかもしれないが、主人公が主体的に動き、成長していくさまは「冒険」と呼んでいいだろう。やっと読者と地続きの物語が出てきた。

以上、最終選考会では各作品について討議を重ねた。
「おでん町探偵・Wナンシー」が抜群の評価を受け、改めて議論する必要もなく大賞に選ばれた。

佳作については、やや時間をかけて話し合いが行われ、まだ書き始めたばかりと思われる初々しさを評価し、今後に大いに期待したいということで「神サミット2016」が選ばれた。

次の開催は2年後になるが、応募者には精進して、次こそは大賞を狙っていただきたい。

冒頭にも述べたが、何より読み手を意識してほしい。原稿のレイアウトに気を配り、校正を十分するのはもちろんのこと、読み手の年齢、興味、心情に自然に応える形のものをぜひお願いしたい。このようなリクエストに対応することは、プロとしての最低条件である。この賞は「お祝い」ではなく、受賞作は長く続く作家道の入り口に立つデビュー作になる。その覚悟と気合を持ちつつ、柔軟に表現に反映させる新人の登場を待ちたい。

大賞 「おでん町探偵・Wナンシー」小路すず
佳作 「神サミット2016」安井やくし


2016年12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

選考委員の選評

選評 後藤みわこ

選考委員になって5年たちました。初めての選考から「なぜ応募作にはファンタジーが多いんだろう」と首をかしげていました。

冒険=異世界ではないはず……現実世界で、実際にありそうなできごとに対して、主人公が知恵や勇気で活躍・解決すれば、それも「冒険」ではないの? と。
今年は「真夜中……」と「おでん町……」という、魔法も超能力もない作品が最終選考に上がり、わたしは高い評価をつけました。
ただ、「真夜中……」を最終選考で推すことはできませんでした。(ネタバレですが)主要登場人物が自殺を図るからです。助かったのは「結果」にすぎません。これを子どもたちに届けられる? と問われれば、答えは明らかでした。

児童文学とは「児童が主人公の作品」ではなく、「児童が読める・楽しめる(児童に手渡せる)作品」だと思います。周防さんにはその筆力を活かして、児童書として出版できるものを書いていただきたいです。
日常的な(現実にありうる)冒険を描き、最終選考をクリアしたのが「おでん町……」でした。伏線の張り方等、ミステリーとしてもうまくできているなぁと楽しみました。こちらも「死」が扱われていますが、その点が問題になるような書き方ではありません。

異世界ものも選考会に上がってきました。でも、児童向けに200枚足らずで描くには相当の空想力と筆力が要ります。その世界について、歴史、地理、文化等をイメージしたうえ、それを読者(子どもです)に理解できるように表現しなければならないのですから。
異世界を中途半端に描くくらいなら、身近な世界の身の丈にあった「冒険」をきっちり書いてみるのもいいのじゃないでしょうか。

15回目にして、「この賞ではファンタジーはもちろん、SFもミステリーも受賞するのだ」と証明できました。再来年の第16回も、ワクワクする物語をお待ちしています。

選評 眉村卓

※今回、眉村先生は体調不良のため最終選考会にはご欠席されたため、最終選考会に寄せられましたコメントを掲載します(岩崎書店編集部)。

選考会に出席できない状況なので、最終選考対象になった作品についての感想を番号順に書きます。

「赤ちゃんは名探偵!」
アイデアとしては、意表をつく面白さがあるけれども、やはり頭の中で作った感じで、無理がある。まだ人間として外界を見ておらず世間知ゼロの赤ん坊に、この役目を持たせるのなら、普通の赤ん坊を超越した何かが欲しい。また、赤ん坊にしかない感覚がいかに武器になるか、まで行っていれば、新鮮だったのではないか。

「神サミット2016」
神サミット開催通知の使者になった少年という設定が面白い。白黒両方の狛犬の個性や全体の会話で読ませる。何だかカッコよく、しかし小さく仕上げた感じ。全体として、話がうますぎる気がするけれども、まあ、割合楽について行けた。

「真夜中の海を歩けばいいのさ」
終わり近くになってから、作者が何を言いたかったのか、テーマが浮かび上がってくる。だが正直、「自殺行」にどこかお遊びの趣があり、途中の脱線(?)もサービスめいていて、切迫感に乏しいと思った。こういう少年は、こういうものなのだろうか。いささか自意識過剰なのを、意欲と取っていいのかもしれない。

「ブルーナイト・パーティー」
スピルバーグばりの、いい話である。別の言い方をすれば、SFとしてはまあ定式的設定であって、それがどう受け止められるかであろう。話の進め方は順調で、大きな穴もないと感じた。話が単純だからと言われればそれまでだろうが。まあまあの作品。

「<神の子>」
この作者には、エリート願望があるのではないか。また、自分の中の神の子や村の外の世界というもののイメージを、そのまま読者に押しつけるのも、きつい。つまりは逃走話なのだが、私にはどうしても、この世界の生産構造が不明な点や、意外にせこいクスリや道具などが出てくることなどが、気にかかった。そもそもこの主人公が、そのときどきの状況に適応できるはずがないだろう、との疑念もあった。

「おでん町探偵・Wナンシー」
話の進行が速い。わかり易い筋書き。面白がって読む人は少なくないだろう。――ということをまず認めた上で、文句をつけると、半分マンガだ、古くないか? これで主人公が10歳? 芝居っ気が強すぎる、いささか強引で作者がまず楽しんでいる、ということになるだろう。私としては、好き嫌いの問題ではあるまいか、と、考える。悪くはなかったのだ。

選評 南山 宏

結論から先に言えば、今回の大賞受賞作は本賞制定後15回目にして初めて、これまで毎回の受賞作品のほぼすべてを占めてきたいわゆる「和風ファンタジー」ではなく(1作だけはSFプロパーの作品だったが)、ミステリー(推理小説)のジャンルに明快に分類できる秀作となった。これはジュニア(小学高学年)向けの冒険小説賞としての本賞の幅の広さを、将来本賞に応募するみなさんに送る暗黙のメッセージともなりそうだ。

その大賞受賞作『おでん町探偵・Wナンシー』は、タイトル通り名前を縮めればナンシーと読める少女と祖母のコンビ探偵が、呪いのかかった(?)幽霊屋敷の幽霊を追い払ってほしいと依頼され、夜の無人屋敷に張り込む――一見お化け話のようだが、全然そうではないところがミソだ。「『おでんまち』は漢字で小伝町、だから食べ物のおでんとは何の関係もない……」という人を喰ったような書き出しから始まり、会話も地の文も終始テンポがよく軽快で、登場人物たちのキャラの描写もそれぞれよく立っている。「あの屋敷には呪いがかけられている」「死人がふたりも出た」という一見恐ろしげな話も、最後は意外なオチがちゃんとつけられ、対象読者年齢に対する配慮もぬかりない。読者が成人なら多少既視感があるかもしれないが、本賞の対象読者の年代なら問題はない。彼らがちょい背伸びしたぐらいの目線で描かれる愉快痛快な探偵物語は、少年少女たちには新鮮で、文句なく楽しんでもらえるだろう。

佳作『神サミット2016』は、内気でおとなしくて友達運もない小5少年が、ふとした縁で四方の神社の神々に「神サミット」開催を伝える使者に選ばれ、使命を無事果たすまでの奮闘と成長の物語。少年を助ける阿形吽形の狛犬コンビはじめ、各神社の動物種の異なる守護獣がユニークで面白い。ただし、伊勢志摩サミットの年だからとはいえ、タイトルの2016はまったく無意味。

この2作に比べると、残念ながらほかの4作品は、発想や筋立てや文章力のいずれかに物足りなさが目立った。

『赤ちゃんは名探偵!』は、赤ちゃんの成人並みの世間知の由来にもう一工夫欲しかった。『真夜中の海を歩けばいいさ』は、いくらウイットとユーモアたっぷりでも、対象読者年齢を考えると自殺行のテーマは重すぎる。ましてや結果は失敗でも実行してしまうのはいただけない。『ブルーナイト・パーティー』は、パラレルワールドの設定に雰囲気があるが、「青」にこだわるところが今ひとつ説得力不足。『神の子』は、神の子とその世界も外の世界への逃走も、すべてがゲーム的説明を一歩も出ず、リアル感がなさ過ぎた。

選評 島岡理恵子(岩崎書店)

今年の傾向については、総評にある通りで、最終選考に残った6作品についての見解もおおよそ選考委員の方々は共通していました。そう言う意味では票が割れることもなく順当にまとまった気がします。

大賞に選ばれた「おでん街探偵・Wナンシー」は冒険小説というよりも下町の人情物語のような印象を持ちました。移り気な祖母と孫とで事件を解決する。ミステリー探偵もので主体的に動いているのがいいです。
細かな設定をきちんと描いていて、破綻せずに先に行くほど謎が解けて行く小説らしい構成でした。

佳作に選ばれた「神サミット2016」は、狛犬たちがリアルな犬になって主人公に同行します。神様が集まって話をするのは、出雲大社を連想します。神様自体の会議よりもその手紙を運ぶことがメインになっていた分、神様の会議の比重が低くなってしまったのは惜しい気がしました。それでも全体的にはまとまりもあり、同級生との微笑ましいやりとりも好感が持てました。

「ブルーナイト・パーティー」は別の世界の住人とさらわれた妹を取り返しに行くと言う物語。両方の世界を行き来しているとか、人間よりも前から生きていたとか大部分の話にはついていけない感じがしたのですが、最後の方で実は同級生で淡い思いを抱いていたというところには惹かれました。ただ、それまでとの物語の流れと異なるので、残念なところです。

ある程度ボリュームのある物語を生み出すには、それだけの構成力、筆力が必要になります。この賞の受賞者がいろいろな場面で活躍されているのはそれだけ力がある方でとても嬉しいことです。そこに続く方々を私たちはこれからも期待したいと思います。

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選考経過

大賞 「野ざらし語り」泉田もと
佳作 なし

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受賞の言葉

大賞

「野ざらし語り」泉田もと

【受賞の言葉】

受賞の連絡をいただいた後、舞い上がった気持ちを少し落ち着かせようと
新聞を開きました。
その時、目にとびこんできたのが運勢欄。
私の干支のところにはこんな言葉がのっていました。

「白蓮泥中に咲く意。苦悩の中に楽あり。勇気をもって進め。」

これからの自分に向けられた言葉のように思えて、しばし紙面に見入ってしまいました。
ここがスタート地点。勇気を持って前進したいと思います。

本当にありがとうございました。

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「ジュニア冒険小説大賞」は、今年で14回目を迎えた。応募総数は、歴代第5位の104篇である。一昨年、昨年と大賞が出ないなかで、満を持して臨む今年度の最終選考会となった。出版状況は依然として厳しいが、この賞から世に出た受賞者のなかにはすでに作家として立派に活躍されている方も多い。ぜひその列に続いてほしい。 応募作品の傾向としては従来「和」テイストのものが多かったが、ここにきてやっとバラエティに富んできた。
さまざまなジャンルから質の高い作品が集まり、世に出ていくことを期待したい。

第一次選考は、例年通りすべての作品を対象に行われ、次の11作品が通過した。

「ある魔道家の跡取り息子」 宮本しょうへい
「野ざらし語り」 泉田もと
「時の呪いにかけられた街」 こながいあきふみ
「ハッピーヒナマツリ」 松下好美
「竜ジン0903」 しのは まや
「魔法のコトバ」 鎌倉ナツ
「秋葉家のボディガード」 太月よう
「勇者ユキの海」 小山まりえ
「灰の街の僕ら」 坂月コウ
「最強の武器を持った少年」 花形 怜
「約束」 戸田瑞紀

この11作品を対象に第二次選考を行った。

前述のようにバラエティには富んでいる。文章力はどれもあり、さほど心配せずに読めたという意見もあった。当たり前だが、文章力は基本中の基本であり、それがないとアイデアその他、何がよくてもダメである。この11作品は標準的なレベルには達しているが、読み続けるのがやや厳しいものもあった。読者を引っ張るベクトル、読み続けさせる力がほしい。作者本人だけがおもしろがっているのもダメなのである。何より楽しむのは読者だという、これも基本的なことを理解していない書き手が意外と多い。

結果、次の5作品が残り、最終選考会が行われた。

「野ざらし語り」 泉田もと
「魔法のコトバ」 鎌倉ナツ
「秋葉家のボディガード」 太月よう
「勇者ユキの海」 小山まりえ
「約束」 戸田瑞紀

「野ざらし語り」作者は3年前に同賞で佳作を受賞している。その際、筆力は高く評価されたが、グレード(対象学年)の高さが問題視された。今回、そこをクリアして、子どもが主人公であり、饒舌な「しゃれこうべ」とともに旅をする物語となっている。要求されたことに応えられるかどうかも書き手の重要な資質であるので、評価したい。古典落語もしくは講談のような古さも感じるが、江戸の世界を描ききっている。主人公と「しゃれこうべ」の友情の描き方、偉大な父にコンプレックスを持つ頼りない子どもが自分らしく成長していくところも好ましい。最初から最後までスムーズに読んでいけた。

「魔法のコトバ」美少年、夢、耽美な世界が広がる、独特な雰囲気の物語である。アイデアはいいが、いかんせん読みにくいのが難点だった。
一読で理解できない、こちらが想像で補わないと状況が見えにくいというのは不利である。
連作どうしが一応つながっているのはおもしろい。こういうものを書ける人がもっと力をつけて、うまくなるといいのに、という意見が出た。なお、外来語の表記が間違っているところがあった。細部こそ丁寧にお願いしたい。

「秋葉家のボディガード」かつてのコバルト文庫に出てくるタイプというか、ラノベに近いのだろうか。「ボディガードもの」なのだなと思わせるタイトルだが、期待したほどではない。肝心のボディガードがあまり活躍しないのが物足りないのだ。ボディガードは龍なのだが、その特性が活かされていないのが引っかかった。成長時に脱皮する、その場面も見たかった。最後まで読ませる力はあるのだが、夏休みのご馳走が季節外の松茸だったり、もろもろの詰めが甘いのがとても残念だ。丁寧なプロット構築が必要なのではないだろうか。

「勇者ユキの海」日常の中の冒険を扱っており、会話もリアルで、実在の場所を舞台に展開する、地に足がついた児童文学と評価できるだろう。ただ、不思議な光の正体が意外と平凡なものだったり、霧の妖精ウララの存在が多少浮き気味など、残念なところも多かった。登場するゲームは実在するが、架空のゲームを創作する方がよかったのではないだろうか。選考委員のなかでも賛否は分かれたが、文章力、アイデア、展開、どれもあと少し力をつけて、またこの賞に挑んでほしい。

「約束」戦時下の状況をよく調べて書かれた作品。神社、戦災を免れた木、過去の町名などは実在のもの。ただ、リアリティに問題がある。調査が甘いのか「この部分はあり得ない」という指摘も出た。調べたことがそのまま書かれているように読め、主人公が「その場にいる」と感じられないのも惜しい。戦争を子どもたちに伝えるためにぜひ読ませたい類の内容だが、タイムスリップものはすでに出ているものが多い。どのように違いを出していくのかが重要だろう。また、主人公があっさり別れを告げて現在に帰るなど、タイムスリップのシステム自体も曖昧で、読者を戸惑わせる。物語のきっかけとなる転校生と主人公の関係性の描き方もやや雑だった。

以上、最終選考会では、各作品について討議を重ねた。 結果的に「野ざらし語り」が群を抜いてうまく、満場一致で大賞に選ばれた。一昨年、昨年と大賞が出なかったので、喜びというより安堵に近い雰囲気に包まれた。一方で、佳作については、どれも決定的なところがなく、今年は見送られることになった。
どの作品も一定の文章力があり、アイデアもある。
常連といえるほど、毎回最終候補レベルにくる書き手もいる。
しかし、あと一歩、いま一歩なのはどうしてなのか、厳しいかもしれないが掘り下げてほしい。ふつうの人のなかではうまいほうでも、これがデビューとなったら、次はプロの世界での挑戦が始まる。ここまでで伸びきってしまったら、先は続かない。十分に力を備えて、選考委員全員をうならせるほどの作品で受賞してほしい。

大賞 「野ざらし語り」泉田もと
佳作 なし


2015年12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

選考委員の選評

選評 後藤みわこ

泉田さんは以前、佳作に入ったことがあります。そのときのマイナスポイントのひとつはグレード(対象年齢)が高いことでした。

今回の応募作を手にしたとき、「あ、ばっちりグレードを下げてきたな!」と思い、まずそれを評価しました。自分の作品をコントロールする力、それはこの仕事に重要な、デビュー後に必ず使うものだからです。

最終選考に残るくらいの方なら、自分の好きなことを好きなように書き上げる力はお持ちなのです。でもデビュー後は、それだけではやっていけません。編集者と共に、作品をさらに磨き上げることになるからです(あなたのアイデア、書いた原稿が、そのまま活字になることは普通はないですよ)。

そのための指示や提案(抽象的なもの・具体的なもの、長くして・短くして、グレードを上げて・下げて等の、いわゆる「ダメ出し」)に応えられないと、作家として本を出版しつづけることはむずかしいのです。

「野ざらし語り」は、もちろんおもしろい作品です。内容にチェックを入れることがほとんどなく、「読者のように」読まされてしまいました。ですが、作品単体ではなく「泉田さんはこの仕事をやっていける人かもしれない」と思わせてくれたことに、高い評点を差し上げました。

大賞受賞、おめでとうございます。

ジュニア冒険小説大賞は新人賞。「作家になる賞」です。受賞作が、あなたの「唯一の傑作」では困ります。デビュー作が「人生の記念品」で終わってはいけないのです。

最終選考まで上がりながらあと一歩のみなさんは、「コントロール」について、今一度考えてみてください。選評を「編集者からのダメ出し」代わりに……これをクリアしないと作家をやっていけないんだとご自身を鼓舞して、美点(ありますよ!)を磨き、弱点を補正して、(焼き直しではない)新作でまたトライしてください。期待しています。

選評 眉村卓

初めに読んだ11篇について印象を述べると、いろんなタイプの作品があって、面白かった。よく、こうこうこんな傾向の話が入選しているからその線を狙え、というような言い方をされるが、少なくともこの賞については、ジュニア向けの冒険小説としてよくできているかどうかが問題なので、作者自身が読みたいという話を頑張って書けばいいと思う。(もっとも、作者が自分だけでよろこんでいるのでは、ま、大した作品にはらないが)。

最後まで残った5編について、番号順(到着順?)に私の感想をしるしたい。

◎野ざらし語り=いいタッチである。高座で語られる人情話のような趣があって、すいすいと読んでゆける。しかしそれゆえに、古いといえば古い感じがあるので、その点どうかなと思ったのだ。だけど逆に、それが今の時代の読者には目新しいのではないか、との考え方もあるだろう。ということと別に、この話、読む人を適当に裏切りつつ、ちゃんと主人公の成長物語になっているところが、うれしい。全体として、たしかに作者に力量があるのを感じさせた。

◎魔法のコトバ=勢いがあるし、奔放で、才気もあるのを認める。勝手なことを言わせてもらうならば、出てくる者出てくる者、みんなキレイでそこそこ何かいいところを持っていて――というのが、私個人には気楽だと映るが、それは好みの問題かもしれない。ただ、ややこしいし、作者が勝手に自分でわかってしまっている感じがあって、何だか危ないなあという気がした。

◎秋葉家のボディガード=梗概を読んで、どうも趣味的設定だなと思った。でもぐいぐい引きつけてくれたらそれでいいので、その点成功しているかどうか、私には何とも言えないのである。得意なところはオーバーな位に書くけれども、不得意なところは簡単に片づける、とか、道具立ては大げさなのに日常的だ、とか、よくわからんことがポンポン出てくるとか……私としては、この人がサービスしようとしていることと、読者が求めているものは、ずれているのではないか、と、考えてしまった。あるいはこれでいいのかもしれないし、書きようではガッチリまとまって光りだすのに、とも思う。

◎勇者ユキの海=北海道に転校したユキヤが案外なまでに健闘(?)するのに、ふーんと思った。でもこの話、冒険物語としてもいいのだろうか。また、主人公の周囲の人たちがそれぞれ現実的な存在感があって、地に足がついた感じなのに対し、話のキーとなるべきウララが、話のなりゆき上からか、正体不明のままなのが、やはり物足りない。なかなかいい味ながら、残念、と思ったのであった。

◎約束=私は初めにこの作品に、最高点をつけていたのだ。戦時中の日本のことをよく調べているなと感心したし、こういうストレートなタイムスリップものは、あまり読んでいない人にもわかり易いのではない、と思ったからである。しかし他の選考委員の話を聞き、問題を指摘されたりしているうちに、考えが変わってきた。①調べたのをあれこれ書くだけでは、そういうことを並べたというだけになってしまう――と言われ、実際に当時を生きてきた私としては、たしかに、と頷かざるを得なかった。例えば、B29の飛行音を録音を聞いて覚えた、などというところ、当時のふつうの人間には、録音したり再生したりすることなど夢の夢だったのを、現代の人間の意識で書いている、としなければならない。どうせなら、もっと突っ込んで、人々の本当の気持ちまで描きだすとかが、必要なのであろう。②ふだんSFなんて読んでいない者でも、こういうあまりにもよくあるタイプの話は今更、ということにならないか。もっと新奇なプロットにしなければだめ、と言われると、まことにごもっとも、なのである。で……やっぱりもうひとつ、ということなのかな、と、評価をダウンさせたのであった。

選評 南山 宏

今回選者一同の圧倒的支持を受けて大賞を射止めた『野ざらし語り』は、発想・展開・文章の三拍子が揃った完成度の高い作品で、私も予選の段階から受賞するならこれしかないと思っていた。作者は3年前の佳作入選者でもあり、それ以来重ねてきた精進が実った結果と思う。また、ここ2年は大賞受賞作を出せず、選者としてまことに歯がゆい思いだったが、3年ぶりに大賞にふさわしい作品が現れてくれたことで、少しは責任を果たせた気がしている。

ここでの〝野ざらし〟とは、古典落語の名作「野ざらし」に出てくるような〝野たれ死にした人の頭蓋骨〟の意味。大店を営む父親の命で、大切な品物を受け取る旅に出た気弱で内気な少年が、帰路、信頼していた同行の奉公人に裏切られ、絶望して山中をさまよううちに崖から転げ落ち、あげくは歯を鳴らして喋る不気味なしゃれこうべに出くわして、ここはてっきり地獄と思い込む――

ホラーっぽい出だしながら全然ホラーではない絶妙のツカミから始まって、お喋りしゃれこうべ(じつは非業の死を遂げた同年輩の少年)に尻を叩かれ、しだいに友情を深めながら、奪われた大切な品物を取り戻そうと江戸を目指して珍道中を繰り広げる。そして意外な真実が明かされるとともに、しゃれこうべの少年が成仏できないこの世の未練も解消され、かつてはひ弱だった主人公の少年が立派な跡取りになるまでの見事な成長物語になっている。

この受賞作に比べると、残念ながらほかの4作品は、それぞれに発想や筋立てや文章力に物足りなさすぎる点が目立った。

『魔法のコトバ』は、主人公の少女を護るため、記憶や夢に入り込める魔法使いの少年が3つの怪事件を次々解決する怪奇幻想譚。場面の描写や会話のやりとりは神秘的雰囲気たっぷりだが、登場人物たちが小学5年生にしてはいやに大人びすぎるし、筋立ても難解なほど入り組んでいて、対象年齢読者層にはグレードが高すぎる。

『秋葉家のボディガード』も、主人公の少年の一族を代々護ってきた専属ボディガード(正体は少年のご先祖様に命を救われた青竜の子孫)が、少年を陰になり日向になって悪霊や危難から護るお話だが、こちらは真逆に話の造りが単純すぎた。

『勇者ユキの海』は、ニンテンドーDSのゲームになぞらえながら北海道様似町を舞台に話が展開するいわば〝ご当地ドラマ〟だが、現実への寄りかかり方がどちらも中途半端で、主人公の少年と遭遇する〝霧の妖精〟の設定がほとんど生かされていない。

『約束』は、春休みに〝戦争〟の課題を出された少年が太平洋戦争の末期にタイムスリップする話で、当時の実情はよく調べて書かれているものの、スリップの仕方に今ひとつ工夫がなく、またすでに類例作品が数多くあるので、いささか新鮮味に欠けた。

選評 島岡理恵子(岩崎書店)

最終選考の中で一番印象に残ったのは、大賞受賞作品だった。

泉田さんは第11回で佳作に選ばれているが、そのときにも私は泉田さんの作品が一番印象強かった。選考委員の先生からのご指摘で、自分の未熟さも思いしりつつも、泉田さんのこれからがとても楽しみだったのだ。

そして、今回の作品である。

前回に批評された部分をしっかりとクリアし、子どもの目線で創作していき、成長物語ともいえるストーリー。そこにはユーモアもあり、友情もあり、こうきたかと思えるような仕掛けもあって、どんどん読み進めることができた。この続きが読みたくなる気持ちは、とても大切な要素だ。

最終に残った作品の中にも、途中でやめようかと思える作品も多々あった。ある程度の長編になると、最後まで読ませる構成力は重要である。

そのような意味で、今回は満場一致で大賞が生まれた。もちろん、これがゴールではなくスタートなので、泉田さんはこれからが勝負になる。

前作も今回も時代物だったが、これからは時代物だけにこだわるのでなく、もう少し幅広い分野で実力を発揮してもらいたい。もちろん、時代物でも、子どもが楽しめるものを作ることは大事である。個人的にはもっと時代物が増えてもいいと思っているが、苦手意識を持つ人も多いので、さまざまな挑戦をしていただきたい。

今回佳作は該当者なしとなってしまったが、これは仕方がないかと思う。冒険小説という骨子を理解した上での応募なのかと疑問視するものもあった。

応募される方々はもちろん過去の受賞作は研究されているだろうが、それにとらわれることなく、自由な発想で冒険小説を書いてもらいたい。

もちろん対象読者、ストーリーのおもしろさなど、気をつけることはたくさんある。

大賞を経てデビューしてからが本当のはじまりで、それはデビューすることよりも一層厳しいことであるのは、すでに先にデビューされている先輩方はよくご存知である。

今回最終選考に残った方々も選考委員の方々のアドバイスを参考に、よりレベルアップして再挑戦していただきたい。

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ジュニア冒険小説大賞とは

海外ファンタジーばかりが持て囃される傾向にあった2001年、現代の子どもたちがワクワクするような日本オリジナルの冒険物語を子どもたちに届けようとして創設されたのがジュニア冒険小説大賞です。

賞を主催する創作集団プロミネンスは、SFを核としながら長く児童向けエンターテインメントの創作と普及に努めてきた作家・翻訳者・画家の団体。岩崎書店は、コナン・ドイル、H・G・ウェルズ、ジュール・ベルヌなどの冒険小説を早くから子どもたちに紹介してきた児童図書出版社です。

長編の児童読み物が刊行しにくい出版状況のなかにあって、書き下ろしの児童向け冒険小説を出版し、児童読み物をめざす新しい書き手の登場を応援しようとする、作家集団と出版社の挑戦でもありました。

「小学校高学年から読め、冒険心に満ち溢れた長編小説」という難しい条件から応募数こそ多くはありませんが、送られてくる作品の質は高く、大賞を得て刊行された作品はいずれも版を重ねて発行部数も1万部2万部を超えるか1万部に迫っています。

先輩からのメッセージ|廣嶋玲子(第4回大賞受賞)

「挑戦すれば、どんなに低くても勝率はある。逆に挑戦しなければ、勝つ確率はゼロだ」

これは私がいつも自分に言い聞かせている言葉です。この言葉を信じて、私は第4回ジュニア冒険小説大賞に作品を送りました。それから4カ月後の2005年10月、岩崎書店さんから「あなたの作品が大賞ですよ」とお電話をいただいたのです。その時のことは、正直よく覚えていません。「大賞」と聞いたとたん、頭がまっ白になってしまって、ただただ飛びあがるほど嬉しかったのをおぼえています。

私にとって、「ジュニア冒険小説大賞」はまさに運命の賞です。この賞のおかげで、私はたくさんのどきどきや喜びを味わうことができました。この賞をいただけたから今の自分があるんだと感謝しながら、現在、「もっといい作品を書きたい!」と、励む毎日です。

どうか、これから応募される皆さんにも、たくさんのどきどきと喜びが訪れますように。

<プロフィール>
横浜生まれ。第4回ジュニア冒険小説大賞受賞。これまでの作品に『水妖の森』、『盗角妖伝』(岩崎書店)、「はんぴらりシリーズ」(童心社)、『鬼ヶ辻にあやかしあり』(ポプラ社)がある。

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ジャンル

ファンタジー、SF、ミステリー、ホラー、ナンセンスなど、どんな内容でもかまいません。冒険心に満ちあふれた物語であること。

グレード 小学校高学年から読めて楽しめるもの。
原稿枚数 400字詰めで150枚から200枚(枚数厳守)、ワープロ可、梗概(800字)を添付すること。
※字詰め、行数は自由。ただし、400字で換算した枚数を明記すること。
書き方など 本文とは別に〈ジュニア冒険小説大賞応募〉と朱記、次にタイトル、筆名と本名、住所、電話、性別、年齢、職業を明記。原稿は縦書き、頁数=通し番号をつける。袋綴じ禁止。応募原稿は返却しません。一人一点に限ります。
資格 創作児童文学の作品を商業出版していない方。
二重応募の禁止など 他の公募に応じたことのある作品、応募中の作品は選考対象外。なお、全応募作品について、賞の発表(授賞式)後6カ月間は岩崎書店にオプションを設定します。
選考委員 南山宏、眉村卓、後藤みわこ、岩崎書店
送り先 〒112-0005 東京都文京区水道1-9-2 岩崎書店内ジュニア冒険小説大賞選考委員会
応募締切り 2018年6月末日当日消印有効。
※今回より隔年開催となりました。
発表 2018年12月、雑誌「日本児童文学」等に発表。12月1日岩崎書店ホームページにて発表。
大賞は賞状と賞金20万円。佳作には副賞。
出版 大賞作品は岩崎書店から出版。規定の部数以上について印税を支払います。

応募について、くわしくは岩崎書店編集部まで
TEL.03-3813-5526 FAX.03-3812-1381
メールでのお問い合わせはe-mail:info@iwasakishoten.co.jp
までお気軽にお問い合わせください。

主催=創作集団プロミネンス・岩崎書店

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 よくある質問 - 2015.01.01

Q,何点まで応募できますか。
A,お一人様一点でおねがいします。

Q,アンソロジー(短編集)を商業出版したことがあるのですが、応募できますか。
A,アンソロジーなどでしたら、問題ありません。過去の受賞者にもいらっしゃいます。

Q,以前ほかの公募に応募した作品はそのまま応募できますか。
A,応募できません。

Q,自費出版で出したことのある作品を応募できますか。
A,応募できません。お送りいただく作品は、未発表のものに限らせていただきます。

Q,商業出版していたが、版元が倒産した作品を応募できますか。
A,一度でも商業出版したものは、ご遠慮いただいております。

Q,原稿用紙でなくてもいいですか。
A,原稿は、手書き、ワープロ、ワード原稿などなんでも構いません。

Q,同人誌で評判の良かった作品を応募できますか。
A,可能です。但し、どの同人誌にいつ出されたのかは明記してください。

Q,フォーマットは400字詰めに合わせなくても、総ワード数があっていればいいですか。
A,字詰めは、400字詰めでなくてもかまいません。最後に「400字詰換算○○枚」と記してください。

Q,自分のブログに発表した作品を送ってもいいですか。
A,昨今のブログの利用状況には種々心配される面がありますので、ブログ発表後の応募は不可とさせていただきます。選にもれた後に発表される分には問題ありません。

Q,子どもが主人公ではないのですが、応募してもいいですか?
A,読者対象が福島賞(中学年)、ジュニア冒険小説(高学年)になりますが、作品の主人公については特に限定していません。

Q,オプションとはなんですか。
A,優先出版権です。

その他応募の詳細については、応募要項をご覧ください。
ご不明な点は、下記お問合せフォームよりお問合せください。

主催=創作集団プロミネンス・岩崎書店

 第13回選考経過 - 2014.12.24

ジュニア冒険小説大賞」は、今年で13回目を迎えた。応募総数は、歴代第一位の137篇である。昨年は大賞が出なかったのにも関わらず、数多くの応募はたいへんありがたく、応募者に感謝したい。今後ますますこの賞が認知されるとともに、受賞者にはプロの作家として着実に歩んでいってほしい。

今年の応募作品の傾向としては、和風ファンタジーが少なくなったことが挙げられる。受賞作品が「和」テイストのものが多かったせいか、応募作品も妖怪がらみなものなどがこれまで目立っていた。ここ数年、選考経過ではそうした傾向を指摘し、「ぜひ新しい風を吹かせてくれる作品を」と訴え続けていたことが届き始めたのだろうか。

第一次選考は、例年通りすべての作品を対象に行われ、次の11作品が通過した。

「ユメビト救出大作戦」 石丸桂子
「オナラよ 永遠に」 おりべ まこと
「ぼくと宇宙船と自由研究の方程式」 諸隈ひとみ
「サマー・ブレイク」 川崎恵
「さがし屋のタマゴと謎の落し物」 戸田瑞紀
「海賊船の料理見習い」 太月よう
「最後の絹の子」 真風月花
「砂のささやき」 羽角曜
「ぼくの不思議なアルバイト」 村上雅郁
「万福寺の若坊さん」 七海富久子
「カナイと八色の宝石」 朝羽 岬

この11作品を対象に第二次選考を行った。

前述のように、題材がバラエティに富んできたのはうれしい限りだが、グレード(=対象学年。この賞なら小学校5、6年)や方向性、テーマがこの賞に沿わない、ということで最終選考までいかないものがあった。また、完成度という面でも厳しいものがあった。

カルチャーセンターではうまい部類でも、入選するにはまだ力が必要なこともある。最後まで読ませる面白さ、魅力的な書き出し、独創的な構想とまとめる力がほしい。今後の精進を期待したい。

結果、次の5作品が残り、最終選考会が行われた。

「ぼくと宇宙船と自由研究の方程式」 諸隈ひとみ
「サマー・ブレイク」 川崎恵
「さがし屋のタマゴと謎の落し物」 戸田瑞紀
「海賊船の料理見習い」 太月よう
「ぼくの不思議なアルバイト」 村上雅郁

「ぼくと宇宙船と自由研究の方程式」 おもしろく書けているが、宇宙を感じないのが最も残念なところである。これが車、海、陸上に置き換えても成立する。重力があるのだから、野球ひとつ取ってみても、地球でするのとはぜんぜん違うはずで、それが具体的に描写できれば物語も面白くできたはずだ。肝である宇宙エレベーターの仕組みも読者には伝わらない。作者はわかっていても、読者が感じられず、想像できなければ、物語にはならない。また、主人公の少年たちは事件に巻き込まれただけで活躍しておらず、女性の宇宙船パイロットのほうが印象に残る。作者が本当に書きたかったのは彼女なのではないか。宇宙での追いかけっこの場面も映画「スターウォーズ」を彷彿とさせ、オリジナリティがほしいという声があった。いちばん書きたいものをまとめて、うまく物語にして仕上げてほしい。

「サマー・ブレイク」 SFのタイムループがテーマになっている。書く力、読ませる力はあり、評価も高かったのだが、いくつか残念なことが重なった。まず、小説や映画で「ループもの」はいくつもあること。最近では「オール・ユー・ニード・イズ・キル」が話題になった。また、日付変更線を利用した解決は、古い作品だが古田足日の「まちがいカレンダー」(11月が31まであり12月1日が消える)でも使われている。やはり新人賞らしい、膝を打つようなオリジナリティがほしい。SFのトリック的にも矛盾や難点も指摘された。前の部分が長く、最後の部分も駆け足なことが惜しまれる。重要な場面はもっと書き込むなど、全体的なバランスを見て、シンプルに書いていけばよかったのかもしれない。

「さがし屋のタマゴと謎の落し物」 主人公の女の子の超能力者の宿命や直観力がありきたりなのが残念。だんだんと真相を探り当てていく、段階的に迫っていく過程はうまい。ただ、現実として、超能力者の子どもがいたら、騒ぎはクラスのなかではおさまらないだろう。新聞やテレビ、社会的な広がりを書くのは難しいが、そこに工夫が必要なのではないだろうか。友だちの叔父さんが刑事なのも、若干都合がよく、緊迫した事件に子どもが同行するのも不自然。シリーズを想定しているのだろうか。テレビドラマのイメージもある。シナリオライターが書いたような物語だが、ドラマと物語(読み物)は違う。文章とせりふは書き慣れており、読みやすい。そのぶん、惜しまれる。

「海賊船の料理見習い」 海賊の風体をしており中世風だが、時代設定が不明確。IHを使っていて冷蔵庫、冷凍庫があり、鶏を飼っている海賊船。ラストは、少年が大人になって、未来から時代をさかのぼって過去にいくとして、どうしてそれが可能だったのか。面白く書けているので、いくつかの理解不能なポイントが惜しい。宇宙船でもよかったのではないか。また海賊船、理想の国を目指しているところがマンガの「ワンピース」をどうしても思い起こさせる。海賊はほかに映画でも有名なものがあるから、オリジナリティを出すのが難しいのでは。料理の場面など、読者を引き込み、読ませる力はある。

「ぼくの不思議なアルバイト」 日常の世界に非日常をぶちこむ力がある。アホらしくておもしろい、このタッチと語り口。ちゃらんぽらんのようであり、きちっとおさえている。22歳の作者には、将来性を感じさせられる。しかし、選考会では、評価が二分された。主人公が大学生であり、特に冒険もない。主人公が話の始まりと終わりとでは何かが変わっており、成長が約束されるのが児童書だが、そのカテゴリーにはまる作品ではない。才能は確かに感じさせるが、2年前に最終選考に残ったのと同様に、短編を集めた作品というのも応募要項の規定から外れているのではないか、作者本人は明確に児童書作家を目指しているのだろうか、というのも議論となった。

以上、最終選考会では、各作品について討議を重ねた。特に最後の作品である「ぼくの不思議なアルバイト」については、評価が分かれたこともあり、時間をかけた。

昨年も「大賞」が出なかったなかで、改めてジュニア冒険小説大賞とは何なのか、考える時間でもあった。この賞は、小学校高学年を読者対象年齢としており、なんらかの「冒険」のなかで主人公(子ども)は成長をしていく。テイストは異なるが、歴代のどの作品にもそれは貫かれている。受賞作は、この賞の今後の基準ともなるものだ。大きく外すことはできない。

結果として、大賞は今年もなく、佳作に「ぼくの不思議なアルバイト」にすることが決まった。村上さんにはぜひ、子どもを主人公にした長編で挑戦していただきたい。

2年連続大賞作なし、という予想外の結果に終わったが、出版不況が続くなかで、あえて新人を出していく重みは以前よりもさらに増している。それはやはり満場一致で自信をもって行いたい。来年こそは、と心から願う。

2014年 12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

選考委員の選評

選評 後藤みわこ

これまで「え、また?」と溜め息が出るほど続いた異世界、特に和風のファンタジーがほとんどなくて、最終選考に残った作品世界は多種多様でした。「目新しい設定」「扱いのむずかしい題材」もあり、原稿を手に取るのが楽しかったのですが、どこかがよくても何かが足らず、とうとう「これこそ大賞だ!」と思えるものに出会えませんでした。

今回の選考では、「ジュニア冒険小説大賞」という賞の意味、児童書として売られることの意味について考えさせられました。

ネット公開とか同人誌即売会のためなら、何を書いてもいいでしょう。一般向けの賞に挑戦された方が「合う」応募者さんもあるかもしれません。

受賞作は『大賞』の帯をつけ、児童書として商業出版されます。それにふさわしくなければ、賞を差し上げることができません(今回だって、読んで笑った作品、涙ぐんだ作品はあるのです。それでも大賞に推せません)。

上位に残ったみなさんは、その想像力を駆使して、ご自身の応募作の未来……つまり「書いている作品が受賞後どうなるか」をイメージしてみてはいかがでしょうか。

挿絵がつき、製本され、書店の棚に置かれているところを。どんな子が手に取るか、誰がレジでお金を払うか、最後まで読まれるか、友達に勧めたくなるか……そんなことも。

受賞された方には、2作目以降も「書店に並ぶ作品」を書いていただかねばなりません。子どもたちに届けられるものを創ろう、読者をわくわくさせようという気持ちがあるか、ご自身に確かめてください。

賞への応募がいわゆる「自己実現」のためという方もあるでしょうし、認められればうれしいのはよくわかります(デビュー当時のわたしがそうでしたから)。けれども、それだけが目標では、児童書作家の仕事を続けていくのはむずかしい……これが、デビュー15年目を迎えるわたしの実感です。

選評 眉村卓

最終候補5作品について述べる。

◎ぼくと宇宙船と自由研究の方程式=宇宙を舞台の冒険物語――という感じをいろいろ工夫して出そうとしているが、私には、その舞台設定に整合性がないのが、気になった。悪い言い方をすれば、現代の日本の状況にいろいろ未来的な概念や道具を持ち込んで、話を作り、登場人物を動かそうとしているので、組み合わせの違和感が先に立って、素直についていけないのである。

◎さがし屋のタマゴと謎の落とし物=超能力者の自意識、周囲とのかかわり方という点での作者の感覚というのが、どうも狭すぎるように思った。もっともそのことが全体の軸になっているのなら、個性的な作品になるのではあろうが……。それと、この話の中心が誰で何がテーマか、よくわからない。もう少しすっきりしていれば、と思う。また、この話自体、何となくシリーズものの第一話みたいなところがある。最初からシリーズ化のつもりで書くと、作者の内部のすべてを出し切らないで終わりになる場合が多い。次の機会なんてないという覚悟で物語を書くほうが、成功率は高いのだ。

◎海賊船の料理見習い=大SFになる可能性があるけれども、正直よくわからん、というのが私の感想である。なぜみんな日本語なのか、限定された場に居ながらなぜ料理なのか、そもそも海賊船についての作者のイメージは、単に物語的だということで、海賊船にしたのか? そうしたすべてを、いっそ滅茶苦茶にしてどうにでもなれという格好で出して来られたら、うーんと唸ったのではないか、と考えたりした。

◎サマー・ブレイク=割によくあるテーマだし、話の運びがいささか強引、やたらに山を作ろうとし、サービス過剰の気味もあり、終わりに近づくにつれて、だんだん走りはじめる、といったいくつもの問題があるのは否めない。しかし読ませようとし、それなりにうまくいっているのは事実なのだ。これで、なぜこれがこの子供たちに起こったのか、いささかありふれた観のあるこのテーマを、もっと輝かせる方法はないものか、なかんずく、おしまいの最も重要な部分を、ごく手早く、どたどたばたんと片付けてしまっているのを、もっとがっちりしっかり書くことはできないのか、などがみごとに処理されていれば、よかったのになあ、と思う。

◎ぼくの不思議なアルバイト=これも、難点列挙からはじめると、対象年齢が違うのではないか、短編あるいは連作に近いのではないか、これは夢なのか? アホらしいのではないか? 登場人物たちのやることは、これで許されるのか? 主人公の名が作者の名前だなんて、ふざけているのか? など、いろいろと言っていい。だがこの手際のよさ、トリッキーな終わり方は、へえと思わせる。とりわけこの中での「独りブツブツ」は、私には新鮮であった。似たようなタッチが世上にあろうとも、これは自己主張できるレベルではあるまいか。全体として、正直、こんな感じの作品は、これまで出て来なかった。その意味では、これが大賞でいいのではないか、と思ったのである。

けれども議論の末、「ぼくの不思議なアルバイト」は、これまでなかった可能性を持っているとはいえ、ジュニア冒険小説大賞というものの性格とは必ずしも合わないのではないか、合わないが、捨てるには惜しい、との方向へ、みんなの話が進んでゆき、結果、「ぼくの不思議なアルバイト」を、佳作と位置づけたら、となった。それでやむを得ないのかな、と思っている。

選評 南山 宏

残念というか口惜しいというか、2年連続で大賞受賞作なしという結果になった。応募総数が歴代最多にもかかわらずである。前回の選評でわれわれが、異世界的な日本の過去と現在を交錯させる、いわゆる「和風」テイストの応募作ばかりと嘆いたせいか、最終選考まで残った5作品は打って変わって、宇宙SF、時間SF、超能力ミステリー、近未来海洋冒険、現代魔法ファンタジーとバラエティに富んでいて、その限りでは大いに期待を持たせてくれた。

だが、期待は裏切られた。いずれも書き出しは巧みだし、文章力はあるし、物語の展開も堂に入っている。自分の作品に対する作者の意気込みも思い入れも手に取るようにわかるが、残念ながらどれも大賞受賞にふさわしい作品になっているとは言えなかった。

『ぼくと宇宙船と自由研究の方程式』は重力環境が地球とはまったく違う宇宙空間が描けていない(例えば野球や宇宙エレベーター)。この物語は舞台を海と船に置き換えても簡単に成立してしまう。

『サマーブレイク』は大ヒット映画が記憶に新しいタイムループものだが、この種のSFに必要な論理的整合性が破綻している(時間の環に閉じ込められた人間がそうでない人間に理解させるなど)。逆にファンタジーとすれば論理的な展開の部分がくどすぎる。

『さがし屋のタマゴと謎の落し物』はサイコメトリー能力(触った物品の持ち主に関わる断片情報が「視える」)持つ少女が、資産家老女の真の孫探しに奮闘するミステリー。文章力で読ませるが、人物配置や物語の展開、最後の謎解きまで、予定調和的過ぎた。

『海賊船の料理見習い』は現代の小学生が記憶喪失したまま異世界の海賊船にテレポートして体験する奇想天外な冒険譚だが、下敷きにした大人気アニメが透けて見え過ぎる。せめて『宝島』やホーンブロワー海軍士官ものなど古今の名作をもっと参考にしてほしい。

佳作『ぼくの不思議なアルバイト』は、作者が住む鎌倉付近で日常的に生活するあまりホラーっぽくない魔女や悪魔や怪獣と、一人称の作者自身がアルバイトで交流するという奇抜な設定のノンホラーファンタジー。軽やかな文体も先の読めない展開もキャラのみごとな描出力も、作者の燦めくような才気を感じさせる。

ここまでは大賞に十分値する出来栄えと思ったが、選考の最終段階で、連作短篇形式で書かれていること(最後に全体を通した謎が解かれて決着はつくが)、主人公が大学生の設定で年少者の成長物語として書かれていないことなどのマイナス点が指摘された。暗黙ながら本賞の性格はたしかに中学生以下の読者を対象とする長篇小説賞であり、従来の受賞作がすべて長篇で、せいぜい十代半ばまでの主人公の成長物語として描かれている。そこで眉村さんと私は特別賞ではどうかとも提案したが、前例がないということで結局は前例の多い佳作という枠に落ち着いた。

しかし、作者はまだ22歳と非常に若く、加えて前々回の本賞でも最終選考まで残った実績があり、わずか2年で順当に「成長」して、再び非凡な才能の持ち主であることを証明してくれた。ぜひとも次回こそは、本格的な長篇作品で大賞受賞に再挑戦することを期待したい。

選評 島岡理恵子(岩崎書店)

今年は今までの最高応募数でしたが、残念ながら今年も大賞になるまでは至らず、とても残念な結果となってしまいました。審査員の方々も書かれているように、和風ファンタジーにこだわることはありません。現代でも、もちろんワクワクドキドキの冒険小説はあると思います。

この賞があえて長編小説となっているのは、一定の長さを書くということが、単なるアイデアだけでなく、構成や全体の流れ、文章力、登場人物の特徴などいくつもの評価するべき点があるからです。アイデアはおもしろいが、前半が長すぎて、おしまいが駆け足になったり、読みにくかったり、どこかで聞いたことがあるような部分ばかりが目立ち、個性が出てこなかったり、主人公の存在感が薄いなど、指摘されることは多々ありました。何度も応募されていて、惜しいところまで来ている方ももちろんいらっしゃいます。そのような方々は審査員の声を参考にして、ぜひとも次回にトライしていていただきたいと思います。

今年の最終選考の作品についても一点一点を審査員の先生方が丁寧に議論され、かなり厳しい意見も出ていました。私は版元の代表として、この選考会に参加させていただきますが、昨年に引き続き、これは本にして出したいという作品が残念ながらありませんでした。

以前からもすでに指摘されていますが、書店での読み物の厳しい状況は、読み物を刊行する機会を減らさざるをえない状況にあります。それでもこの賞を受賞された方々がその後もどんどん活躍されて、あの賞を受賞した人ならと思えるくらいになるには、やはり大賞となる作品にかかってきます。幸い受賞後は作家としてさまざまな分野で活躍されている方々も多く、そういう意味では、この賞の役割はとても重大です。それだけにそうそう簡単には大賞になることは難しいのです。2年続けて大賞候補が選ばれなかったのは非常に残念ですが、来年こそは誰もがこれならいけると太鼓判を押せるような作品を期待したいと思います。

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 第12回選考経過 - 2014.12.24

「ジュニア冒険小説大賞」は今年で第12回を迎えた。応募原稿総数は、歴代2位の105編。ある程度、世間に認知されてきたと考えてもよいのだろうか。大賞受賞者、佳作受賞者からも児童文学、一般文芸で活躍されている方が出ており、それはとても心強い。

近年、新設される新人賞もあるが、一方でなくなっているものも多い。受賞作が出ない場合もあり、新人賞の数だけ作家が生まれるとは限らない。そんな中でも、この「ジュニア」から受賞者が巣立ち、力強くプロの世界へと羽ばたいていってほしいと願ってやまない。

さて、昨年は初めてSFらしいSFが大賞となり(『宇宙犬ハッチー』)、応募者が大賞受賞作品を参考にしてくるのかと予想していたが、概していえばそれほどSFらしいものはなかった。相変わらずファンタジー、それも和風の作品が多かった。同じテイストのものでなく、新しい風を吹かせてくれるものがほしい。

また、応募者の年齢層が明らかにシルバー世代に傾いている。キャリアを積んだ先輩方にご応募いただけるのはたいへんありがたいが、その一方、働き盛り伸び盛りの年代にも奮ってご応募いただきたいと心から思う。そうした応募者へのアピールも主催者側の課題だろう。

書ける人が、以前に比べると多くなったとはいえる。しかし、最終選考に残らなかった作品にも共通することとして、発想に一本、筋が見えない人が増えたという意見が聞かれた。毎年言われていることだが、グレード(=対象学年。この賞なら小学校5・6年)無視、自分の知識・教養のひけらかし、押し付けは論外である。抽象的、観念的でも困る。やはり「子どもの本」であることを意識してほしい。「子どもの本」だからこそできることもたくさんあるはず。まだわたしたちが知らない世界、読んだこともない物語をぜひ届けてほしい。

さて、第一次選考は、例年通りすべての作品を対象に行われた。そして、次の9作品が通過した。

「海の羽衣」 波多野たき
「さいはての図書館」 清水さゆる
「水晶のかけはし」 篠原 彰
「マジック・シーガル号の冒険 ~さかさ王国へ~」 ハガチ一廣
「リリー」 笹嶋友晴
「くらやみ坂の魂盗人」 戸田瑞紀
「アキラとオリビエ・レジスタンスの扉」 稲田吹穂
「ぼくとばあちゃんと桜の精」 藍沢羽衣
「菜々とカリュウの魔法使い」 間宮絵美

この九作品を対象に第二次選考を行った。結果、次の5作品が残り、最終選考会で討議された。

「海の羽衣」 波多野たき
「リリー」 笹嶋友晴
「くらやみ坂の魂盗人」 戸田瑞紀
「ぼくとばあちゃんと桜の精」 藍沢羽衣
「菜々とカリュウの魔法使い」 間宮絵美

「海の羽衣」 「浦島太郎」「かぐや姫」ふたつの昔話をベースにしたパロディ。パロディなら元の作品を超えてほしいが、そこまでにはなっていない。話がふたつに分かれたままになっており、全体として芯が通っていないところも残念。また、主人公に感情移入するのが難しい。告白、嫉妬、三角関係など、恋愛感情は小6女子でもあるだろうが、ここまでドロドロしているだろうか。乙姫が結果的に悪人になるのだが、冗談のようなストーリー展開がされている。いくつかの場面では描写が足りず、幼稚な印象を受けるところもあった。たとえば羽衣がずっと物置に置いてあった(変質しないのか)、一晩で天の香具山や富士山へ飛んで往復する(主人公はどこに住んでいるのか)など、細かいが、そうしたところを詰めていないとリアルな感覚が持てない。たとえファンタジーでも重要なところである。ただ作者には書く力はある。もっと書けるはず。今後に期待したい。

「リリー」 外国の物語を思わせるこの作品はややグレードが低い(主人公も十歳である)。悪人は出てこず、全員いい人なのも物足りない印象を与える。しかし、一方でリアリティはなかなかうまく出している。宇宙論、物理学を勉強しているのではないかと思わせる描写があったが、押し付けがましくないのがよい。教養深さ、感性を活かしてもっと書いてほしい。文章はうまく、崩れない語り口調も評価は高い。しかし、2箇所ほど不用意な視点移動があるのは気になる。食べ物の記述もいまひとつ伝わらない。話がうますぎて型どおりにさらりと進む、予定調和な点は評価できなかった。主人公も話を回しているだけで、平凡な印象だ。やはりこの賞には名のとおり、主人公が冒険をし、成長していく作品がほしい。

「くらやみ坂の魂盗人」 タイトルからわかるように「魂」の話である。つまり「人には魂がある」ということが前提で、そこをうまく読者に認識させないとご都合主義になる。白ネコが導いてお膳立てする筋立てであり、「リリー」と同様、主人公に努力と苦労がない。むしろ、ネコを主人公のほうがよかったのではないか。昨年は「オサキ狩り」が佳作になったが、そのオサキと同じように、実際にある伝承をうまく使っている。知識があるのはわかる。しかし、よくある「転校生パターン」の物語であり、妖怪がすぐに改心してしまうところもやや安易だった。子どもたちが互いの能力の違いを認め合いながら行動していく点はよく書けているので残念。もうちょっとおもしろくできたのではないか。

「ぼくとばあちゃんと桜の精」 後味がとてもいい。「美少女になりたい」という男子の変身願望を実現しているが、その変身がよかったのか悪かったのかは書いてほしかった気がする。リズム感のある会話や行間に感じられるユーモアもよい。書きっぷりに安定感があり、読んでいてホッとできた。キャラクターの数の絞り方や書き分け方を見ても、うまく作品をコントロールしていると感じる。ただ、咲野・桜の精・おばあちゃんのことなど、キャラクター同士の係わり合いは一読ではわかりにくいところがあった。現代から過去の時代へ舞台を移す後半は特に、移動の「仕組み」の説明、なぜ巫女が水干を着ているのか(水干はもとは男子の装束、作中では白拍子姿だったということか?)など、読者が混乱しないよう細心の注意を払ってほしい。しかし、概して印象がよい作品だった。

「菜々とカリュウの魔法使い」 まだ若い作者が若さを活かして書いているが、足りないところがある。うまさと雑さが入り混じる。恋愛観は他の作品に比べてはわかりやすいが、もう少し小学生らしいさわやかさもほしい。主人公を「女」としてライバル視するお母さんの記述も同様である。火龍/カリュウ(下流)の表現も伝わりにくい。本が嫌いな主人公設定はよいが、感想文ひとつでこれほど冒険しなくてはいけないのか疑問に残る。闘いもゲームを彷彿とさせる。龍にもいろいろな種類がある。その知識が背景にあるのかどうかも不明確。調べるべきことは調べて書かないと、全体的に浅い印象になってしまう。勢いある書きっぷりはとてもいいので、今後を期待したい。

以上、最終選考会で各作品についての討議を重ねた。今年は「大賞」を決めることに予想外の時間がかかった。積極的に「これを」と思う作品がなかったからである。この賞はプロへの登竜門であり、大賞受賞者はデビューする。受賞作(応募作)=デビュー作である。それが今回の作品でいいのか。どの作品も過去の受賞作品と比べて、文章力やオリジナリティ、インパクトなどあらゆる点が不足している。デビュー作にふさわしい強さがあるとはいえず、第12回ジュニア冒険小説大賞は大賞なし、という結果になった。

佳作については、後味もよく、うまくまとめている「ぼくとばあちゃんと桜の精」にすることが決まった。

大賞が出なかったことは初めてだが、現在の出版不況の中であえて新人を出していく重さと厳しさを応募者同様、主催者側も噛みしめていきたい。来年こそは満場一致で大賞を選べることを願う。

2013年 12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

選考委員の選評

選評 後藤 みわこ

応募作を書く前に、この賞のことをどのくらい調べましたか? 過去の受賞作は、あらすじだけでもご存じですか?

そのうえで「この作品なら受賞できる!」と思われたでしょうか。

わたしは昨年から選考委員を務めています。選考会でも話題になりますが、今年も、ファンタジーの応募作が多いことが不思議でなりませんでした。応募要項には「どんな内容でもかまいません」とありますのに。

もちろん「冒険心に満ちあふれた物語であること」という規定ははずさないでほしいのですが、「冒険=架空の世界」ではないですよね。リアリズムでもいいはずです。それなのに、候補に上がってくる中にほとんど見当たりません。どうしてでしょう。

ファンタジーを書きたい方が多いのだろうとは思いますが……。他の新人賞よりこの賞の方がファンタジーの受賞率が高そうだと思って応募されたのでしょうか。それなら、これまでの受賞作とはかけ離れたタイプのファンタジーで挑戦する方がいいのでは? 同種のファンタジーは、過去の受賞作を確実に越えない限り、受賞はむずかしいのです。

ファンタジーにこだわらない場合は、「別ジャンルのものを書けば目立って有利かも」という作戦も「あり」では?(昨年の大賞は「初めての」SFでしたよ)

デビューを目指すなら、すでにあるもの、ありそうなものではなく、「こういうのは見たことがないでしょ!」と『ドヤ顔』ができるくらいの作品で勝負しませんか?

デビュー後だって同じだと思います。既存の作品と似た内容、似たスタイルでいくら書いても、「このテの作品はもう要りません」といわれてしまうでしょう。

ぜひ作品のジャンルでも「冒険」していただきたいのです。

子どもたちの現実の世界にだって、冒険的なできごとは起こりますよね?

選評 眉村 卓

おしまいまで残った5作品についての感想と意見を述べる。

◎海の羽衣=おとぎ話を下敷きにして、いろいろ変化をつけ、頑張っているなという感じだ。乙姫が悪役であったり、乙に対する甲の姫がかぐや姫だったり、富士山や天香具山が出てきたり……しかし、すべてが主人公中心のつくりで、主人公に共感できなければさっぱり面白くない。何よりも、ベースの違う背景のどちらが主でどちらが従か、読むほうが戸惑うのである。

◎リリー=私は好感を持った。興味を持って読み進められるし、設定やなりゆきに(作者がそのつもりかどうか知らないが)含意・示唆といったものが感じられたのだ。とはいえ視点の扱い方、話中のちょっとした矛盾、物語が型通りでうまく行き過ぎる、などの難点は否定できない。

◎くらやみ坂の魂盗人=怖がる者がいなければ妖怪も存在できない、という大きなテーマと取り組んだのは買う。それをどう構築するかが、簡単ではないのだろう。動物が化けたり魂のことが出てきたり、というのは、それらをひっくるめた世界も展望しなければならない。必要なところだけ使う、というわけにはいかないのである。

◎ぼくとばあちゃんと桜の精=ともかく飽きずに終わりまで読ませてもらった。問題はいくつかあるにせよ、それが大事なことなのだ。

◎菜々とカリュウの魔法使い=私には、こういうのが好きな人にはいいのだろうな、という感じであった。本とか読書感想文についての意識も、正直針小棒大で、これが魔法の世界につながってゆくのは……ストーリーテリングがもう何段か上だったら、私もとりこになっていたに違いない。


大賞というのは、やはり、通り一遍の水準作から抜きん出ていて欲しい。比較すれば「ぼくとばあちゃんと桜の精」が一番いいだろうが、大賞には届かない気がする。

選評 南山 宏

今回は応募総数が歴代2位というのに、編集部における第一次選考では例年必ず10数編は選ばれるところを、わずか9編にとどまったことに、正直イヤな予感がした。その9編に目を通して、イヤな予感はさらに強まった。9編のうち4編は、わざわざ最終選考まで残す必要もないレベルの出来だったからだ。

残る5編の出来栄えは、例年通り最終選考まで残っておかしくない平均的レベルにまでは達していたと思う。だが、問題はそこから先だ。各編を読み比べた結果、不幸にも予感は的中し、ついに大賞に推せるだけの作品を見つけ出せなかった。本賞に初回から関わってきた者の一人として、非常に残念でならない。

残念な理由のひとつは5編のうち3編までが、物語世界の設定が日本の過去と現在を交錯させるいわゆる「和風」路線だったことにもある。応募者が過去の受賞作を研究して安全路線を取ろうとする心情はわからぬでもないが、今さら言うまでもなく本賞は新人賞である。「冒険」の二文字から外れぬかぎり、どんな小説ジャンルのどんな路線でもいいし、誰も従来試みたことのない、たとえばメタ小説のたぐいを引っさげて応募したところで一向構わないのだ。

もっと広くて深い世界観・宇宙観に立って、空間・時間を柔軟自在に操り、飛び越えるような壮大な冒険物語の構築に挑戦することにこそ、新人が本賞に応募する最大の意義があると私は信じる。

その点では『リリー』は、夢の世界に墜ちた主人公の少女が、消えた弟を現実の世界に連れ戻すため、心を持った木の人形の助けを借りて、さまざまなファンタジー世界を冒険するという設定に新鮮味がある。世界や次元が時空を超えて無限に存在し、生命はどこでも繋がり合っているという作者の哲学は、現代最先端の量子物理学的宇宙論にも通底しそうだが、いかんせん登場人物が魔女でさえ善人ばかりで、物語を面白くさせる「毒」がなさすぎた。

『海の羽衣』は、天女の血を引く現代の少女の手助けで、竜宮の乙姫が姉の甲姫(かぐや姫)の力を借りて天界へ帰ろうとするパロディお伽話。じつは乙姫が自己チューの悪女だったというオチはいいが、そこまで行き着く展開があまりにユルすぎる。どうせパロるなら「丙姫」も登場させるなどハチャメチャに徹するべきだった。

『くらやみ坂の魂盗人』は、小5児童の「民話伝説班」が級友たちの魂を抜き取る謎の黒妖怪の陰謀と闘うお話。竜神、化けネコ、化けギツネ、ひとつ目小僧に箕借り婆と、おなじみの妖怪たちが賑やかに絡むが、筋立てと展開の仕方があまりに平凡すぎた。

『菜々とカリュウの魔法使い』は、読書が大嫌いな空手少女が、人間に変身した魔法使いの「火龍」に惹かれ、読書感想文対象書の世界に連れて行ってもらうが、火龍を目の敵にする上司の「木龍」の策略に嵌まって本の世界に閉じ込められ、火龍と力を合わせて木龍の奸計を打ち破る。キャラ描写が抜群で少女の恋心の描出もうまいが、ときどき筆が滑りすぎてか、空手の「バッド割り」(バットや瓦などの試し割りのこと? 3か所に繰り返し出てくる)など、雑な記述になったのが惜しい。

佳作に推された『ぼくとばあちゃんと桜の精』は、小6の男児が祖父の頼みでいやいや女の子に化け、桜祭りの「くのいちトーナメント」に出場登録したことから、桜の神木の精が象徴するこの世の平和を護る「魂」(陽の気)を宿した人たちと、その結界に侵入して災厄をもたらそうとする「魄」(陰の気)に取り憑かれた者たちとの、命を賭した死闘に巻き込まれる。

じつは祖母でもある桜の精が宿って本物の美少女に変身した小6男児が、前世と現代が二重写しになる大人の世界でよく理解できないまま奮闘する設定と展開は、会話も含めて文章力・描写力があるのでつい読まされてしまうが、桜の精の祖母と人間の祖父がなぜどのように結ばれ、父母を介してなぜ〝ぼく〟が生まれ、また現代での登場人物が容貌容姿も苗字も同じ前世の登場人物にどう繋がるのか、きちんと書き込まれていない点も評価を下げた要因だろう。

選評 島岡 理恵子(岩崎書店)

応募総数が歴代2位ではあったものの、残念ながら通過した作品の中に特別に印象に残り、これを本にしたいと思う作品が今回は見受けられなかった。

どの作品も既存の作品を超えるようなところまでにはいたらず、既視感のある作品が多いのだ。

ここ最近は他の児童文学賞をみても大賞受賞作を選ばないことが多くなっている。作品の質についてだけでなく、創作児童文学の出版事情にもかかわってくることが大きいのではないか。書店の店頭で元気なのは児童文庫のエリアで、ハードカバーの読み物はなかなか置いてもらえない。出版社と書店の間にある取次会社が返品を危惧して、確実に売れるものしか取らなくなっている。図書館が購入したり、各地のすいせん図書に選ばれて平積みになれば、多くの人の目につくが、そうでなければ、ほとんどだれにも知られないことになってしまう。データが重視され、過去の作品の売れ行きがよくないと配本部数を減らされてしまう。そうなると、ますます新人の生まれるチャンスは狭まってくる。

いま活躍されている大御所の方々にも新人時代はあったわけで、新人を生み出すきっかけになる新人賞はとても重要である。今回大賞を該当なしとしたのも、あえて厳しい目でもう一度賞の意味を確認し、今後に期待を寄せたかったからに他ならない。惜しくも最終に残りながら受賞にいたらなかった方々もこれをバネにしていっそう奮起していただきたい。

せっかくデビューしてもその後2作目が出にくい状況は、先にあげた出版事情も大きいが、作家自身の努力も関係してくる。とにかく書き続ける。経験が作品のレベルをあげていくことにもなる。なかなか本になりにくいという今の厳しい条件があっても、それでもあきらめずに書くことにこだわって、既存の作品を超えるものを生み出してほしい。

今回は残念ながら佳作のみにとどまったが、来年は審査員一同が納得して大賞となるような作品を期待したい。そのためにも私たち出版社もきちんと新人の方々によりそって、共に歩んでいきたい。

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 第11回選考経過 - 2014.12.24

「ジュニア冒険小説大賞」は今年で第11回を迎えた。応募原稿総数は、昨年の歴代最高を上回り118篇。「ジュニア」の世間への認知度がより広まったと考えられ、非常にありがたい。

今年度だけの傾向とは言い切れないが、応募者の年齢層の高さと和風ファンタジーの多さが目立った。これまでの10回までの間に「和」のテイストを持つものが大賞となってきたことは事実だが、それが応募のための「傾向と対策」に加わり、あえてそうした作品が送られてくるのかもしれない。ただ選考委員会としては、あらゆるジャンルから新味のあるおもしろい物語を求めているので、そのギャップに戸惑うことも確かである。ひとつの傾向に流れるのは、先行きを考えてもあまりよいものではない。新しい風を吹き込んでくれる作品をお待ちしたい。

作品は総じて粒揃いだった。書き手が書くべきものを把握しているのがすばらしい。作者の年齢が作品に投影されることもなく、若い人もしっかりと書いており、選考会では、予選の段階から楽しませてもらった、選び甲斐があったという声も聞かれた。

また、少しずつではあるが、「和」以外のものも見受けられ、違う方向性のものが来ている点にも今後の楽しみが見出された。

選考の基準は選考委員各自に任されているが、ひとりの選考委員は、自分なりの「冒険の基準」を考えて採点したという。そして、書き続けることができる力量があるかどうかも加味したとのことだった。このジュニア冒険小説大賞は新人賞である。受賞すればその作品でデビューすることになるが、その先、ボツが続いても書いていけるかどうか、その厳しさに耐えて作家になれるかどうかも作品から判断している。

さて、第一次選考は、例年どおり全ての作品を対象に行われた。そして、次の14作品が通過した。

「禁じの森 ~忘れられない夏休み~」 戸田瑞紀
「自分の色の見つけかた」 津川有香子
「階段っ子」 七海富久子
「宇宙犬ハッチー」 かわせ ひろし
「オサキ狩り」 泉田もと
「コロリヴン」 下山辰季
「ホームスイートホーム」 小林栗奈
「影の館と錬金術師」 里 洋子
「月男」 太月よう
「枕屋まくらがえし」 樹多ゆたか
「宿妖の竹林」 霧島伊緒
「星がおちてくる」 友木里見
「サウンドホールのその中で」 村上雅郁
「クリスマス島小学校 宇宙ステーション分校物語 奈美樹、宇宙(そら へ」 真北泰充

この14作品を対象に第二次選考を行った。結果、次の7作品が残り、最終選考会で討議された。

「禁じの森 ~忘れられない夏休み~」 戸田瑞紀
「宇宙犬ハッチー」 かわせ ひろし
「オサキ狩り」 泉田もと
「ホームスイートホーム」 小林栗奈
「影の館と錬金術師」 里 洋子
「宿妖の竹林」 霧島伊緒
「サウンドホールのその中で」 村上雅郁

「禁じの森 ~忘れられない夏休み~」 物語をつくるときに必要なこと、すなわちアイデア、展開の仕方、キャラの造形、文章力、独自な文体などのポイントは全てクリアしている。つまりよく書けている作品といえる。しかし異世界ものとしては、よくあるパターンである。新味がほしい。また、テーマに環境問題が含まれた時点でおもしろさが欠けてしまったことも残念である。主人公の女の子が特別な能力に悩んでいることについてとことん突き詰める・彼女の初恋物語にするなどの方向性もあったのではないか。「ゴミ拾い」に走る場面などはもったいない。作品としての作戦をよく立てて、次回、別の作品でがんばってもらいたい。

「宇宙犬ハッチー」 応募作として珍しいSFであるが、よくがんばっている。一貫して子ども目線で書かれているので、SFを読み始める、または興味を持ち始める小学五、六年生あたりなら「おっ」と感じてくれる作品ではないか。犬そっくりの宇宙人というキャラクターは、大人のSFでは今はもうない。だが、子ども向けでならありえる。とっつきやすさ、導入、伏線、構成もなかなかうまい。天文学的なこともよく理解しているのに、それを押し付けずに説明していることや、一見ちゃらんぽらんな文章なのにツボを押さえていることも好感度が高い。ただ、グレード(対象年齢)が低めなことが気がかり。しかし男子向けと考えるのならば、女子に比べてやや幼いのでクリアできるだろうか。友情の部分は非常にいい。両親があっさり宇宙人を信じて歓待するところは、こんなに単純でいいのかとも思うが、面白くもある。そんな明るさもまた、この作品の魅力だろう。

「オサキ狩り」 文章が導入から抜群にうまい。ストーリー展開も結末のおさめ方も巧みだ。だが、いかんせんグレードが高い。小学校高学年では「八百屋お七」を敷いていることはわからないだろうし、お色気描写ともいえる個所も気になった。中高生、どちらかというと大人向けの物語なのかもしれない。また、「オサキ」は関東地方の伝説だが、江戸時代に江戸には入れなかった。「王子のキツネが支配していたから」という説がある。そこをクリアしてほしかった。さらに、他社ですでに「オサキシリーズ」がある点も考慮された。ストーリーの本筋はいいので、残念だ。「ジュニア」の対象となる小学校五、六年生に向け、彼らが心躍らせる「冒険」を書いて、また応募してもらいたい。その筆力は十分にあるし、楽しみな書き手であることは確かである。

「ホームスイートホーム」 語り手は「猫」だが、猫である意味があまりない。また、細部が非常にうまく表現されているが、そこまで書かなくてもいいのではないかと思われるところがある。結果的にテンポが遅くなってしまっているのが惜しい。しゃべる猫やおばけという児童文学らしい要素で構成されているが、テーマ・内容はおとなの物語。歌舞伎町ややくざの抗争といったワードも子ども目線ではない。また、この半分の量で書けるストーリーではないだろうか。順序よく書きすぎて、枚数を感じさせるのも残念な点である。

「影の館と錬金術師」 魔術はおもしろい。内容もよくできていると思うが、ややくどく、なかなかストーリーが動かない。すっきりと終わってくれないのも残念だ。設定が強引に見えるのは、伏線が足りないからだろうか。時にマンガっぽい点も気になった。絵の変化を文章でわからせるのは難しく、おそろしげな感じが伝わりにくい。能動的でない主人公ももどかしかった。「冒険」とは諸説あるだろうが、主人公が自分の頭で考え、判断して、行動するということは最低条件ではないだろうか。自分から何かしていくことのない主人公に、読者が感情移入するのは難しいだろう。

「宿妖の竹林」 独自な世界を創り出そうとしている一生懸命さは感じるが、詰め込み過ぎのきらいがある。小道具も多く、読者の混乱を招くだろう。絵にしないとわかりにくい場面もある。アニメやゲームにすればすんなりと理解できて、俄然おもしろくなるかもしれない。書き手の頭の中にはこの世界がちゃんと見えているはず。読者に伝えるために、もっと枝葉を削いでほしい。文章の工夫も必要だ。特に最後は、説明過多で残念だった。まだまだ若い書き手なので、精進して新しい作品をつくってほしい。

「サウンドホールのその中で」 珍しいオムニバス形式のふしぎなお話で、意欲作であった。ただ、最後の1篇については評価がわかれた。それがストーリー全体を見事に1本にまとめているという評価と、説明をされてしまって興ざめだという評価である。小学生の双子のかけあいが中学生ぐらいのグレードに思えるという意見もあった。また、スナフキンのように自由なイメージのノゾミさんが実は世界の境界を司る人と自ら言うことに少しがっかりした、とも。最後の一篇を除いては、リズム感もあり、おもしろいことは確か。新しいことをやろうとする姿勢、新鮮さもある。まだ20歳の書き手の今後が非常に楽しみである。ぜひ来年も新しい作品を応募してほしい。

以上、最終選考会で各作品についての討議を重ねた結果、発表のとおり、満場一致で「宇宙犬ハッチー」が大賞を、「オサキ狩り」が佳作を受賞することに決まった。

第11回にして、SFがテーマの新しい作品が大賞となり、今後のジュニア冒険小説大賞がますます楽しみになった。明るく大胆な作品の応募が増えてくることを期待したい。

2012年 12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

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 第10回選考経過 - 2014.12.24

「ジュニア冒険大賞」は今年で第10回を迎えた。この記念すべき最初の節目の年に、応募原稿が創設以来最高の百通に達したことは誠によろこばしい。
だが応募原稿の急激な増加は別の不安を招きやすい。賞の傾向が見えてくるということだ。初心者は無理だが、応募慣れした人たちは、過去の受賞作品をよく研究した上で応募してくる。そのため、なんとなくまとまって、そこそこに面白い、つまりマンネリ気味の作品が多くなる。今回も選考委員たちから「もう少し実験的な、新人らしい迫力に満ちた作品が欲しい」「荒削りでもいいので『新しいものを書いてやる』という気概に満ちた作品がぜひ読みたい」という声が聞かれた。

さて、第一次選考は、例年どおり全ての作品を対象に行われた。そして、次の11作品が通過した。

「鏡ガニの伝説」 矢代稔
「風・魔」 市川正純
「ライオンは泣かない」 桂木九十九
「天狗爪」 綵川青夏
「さよならシュレッダー」 林けんじろう
「蛟竜の壁」 清水さゆる
「凸凹霊感トリオおまけつき」 白川みこと
「水と風の調べ」 水下瑞香
「ドアの向こうは魔女の城」 水越かおり
「転校生は忍びのつかい」 加部鈴子
「ペペ&ケルル どろぼう大作戦!」 緒昵吉乃

この11作品を対象に第二次選考を行った。その結果、次の3作品が残り、最終選考会で討議された。

「天狗爪」 綵川青夏
「転校生は忍びのつかい」 加部鈴子
「ペペ&ケルル どろぼう大作戦!」 緒昵吉乃

最終選考に入る前に、二次選考を通過できなかった八作品についての検証を行った。

ほとんどの作品に共通することだが、今時のライトノベル、アニメ、マンガなどを読み込んでいるせいか、会話文がなかなかうまい。しかし、本筋がうまく描けていない。状況が変わったりする転換の場面を描く際などにおかしくなる。いつでもリアリティを持って場面を書きこめる力を持ってほしい。単なるおしゃべりで全体を成り立たせては物語にはならない。

キャラ設定、ドラマとしてはおもしろいものもあった。しかし、「冒険」が案外たわいなく、肩透かしのものもあった。

観念的で、頭で処理しているものも多かった。机の上の発想だけでは読者の心は動かないことを理解してほしい。知識のひけらかし、中途半端なうんちく話もうるさい。特に子ども向けの物語は断定すべきではないことを肝に銘じたほうがいい。

物語には、アイデア、文章、展開、キャラ設定が必要不可欠な要素だが、最終選考に残らなかった作品は、どれかがひどく欠けている場合が多くて残念だった。

最終選考に入る前に、昨年に引き続き、文章量オーバーの問題が話し合われた。最終選考に残った作品でも、明らかに規定枚数の200枚を越えていると思われているものがあった。残念だが、決められた枚数のなかで書くのも審査の対象であることを応募者の方々に今一度お伝えしたい。

「天狗爪」綵川青夏 成長物語がきっちり書かれている。メッセージ性がはっきりしていて、わかりやすい。だがグレードの点で問題となった。読者対象が低く、福島賞の長編版に過ぎないのではという厳しい意見もあった。また物語がもたもたしていて、刈り込める要素があるのではないだろうか。海の村と山の村が対立しているが、元々は山も海の中にあったことが化石からわかるというエピソードは、今時の小学生なら早い段階でわかっているのではということだった。江戸時代の設定だが、現代的な用語も出てきており、徹底されていないことも残念だった。児童文学とはいえ、基本的な時代考証をおさえてほしい。会話文で地の文のような表現もあり、ちぐはぐな感がある箇所もあった。非常にうまく描けていて唸る場面もあったが、物語としてまとめる面で、全体的に力不足さが見受けられた。「人に読ませるものなのだ」という意識で仕上げていく力を養うべく、精進してほしい。

「転校生は忍びのつかい」 加部鈴子 200枚ぐらいだろうか。ちょうどよい長さで物語の過程を楽しませてくれる。場面ごとの演出がいい。忍者の修行の描き方もとてもうまい。最後に主人公の記憶が消されてしまうことで、いい余韻を残している。欠点をいえば、親友の男の子の役割がいまひとつ明確ではなかったところだ。いてもいなくても同じになってしまったのが残念だ。ほかには、伏線の張り方がうまい。子ども向けとしてよく作られているといえる。子どもたちのやりとりもいい。おもしろくつながっていく、読ませる内容になっている。

「ペペ&ケルル どろぼう大作戦!」 緒昵吉乃 とてもうまい書き手で、導入部分など、おもしろいのだが、心に残るものが少ない。枚数も200枚はオーバーしているのも問題だろう。一見洒落ている文章なのだが、長さのせいか、くどさを感じさせる。キャラ設定でも、鬼警部エレクトラが意外と活躍しないなど詰めが甘い。金髪の天使が出てきて、いつも地面すれすれを飛ぶところなど、海外ドラマのようなおもしろさはある。舞台設定も特別な世界を作り上げている。各所におもしろい描写もあり、新鮮な感じはした。要するに才気がありすぎて、才気負けしているのがいちばん残念なところだ。

以上、最終選考会で各作品についての討議を重ねた結果、発表のとおり、満場一致で「転校生は忍びのつかい」が大賞を、「ペペ&ケルル どろぼう大作戦!」が佳作を受賞することになった。

来年から二ケタ台の歴史を刻むこの賞をさらに大きなものにしていくためにも、既存の枠にとらわれない大胆な新人が現れることを期待している。

2011年 12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

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 第9回選考経過 - 2014.12.24

第9回を迎えたジュニア冒険大賞に、今年は85通の応募原稿が寄せられた。歴代第3位となる多くの応募数に感謝したい。
今年の最終選考会で何度か聞かれた特徴的な事柄がある。それは、「場面・場面のつなぎだけで一本筋の通った物語がない」ということ。
例年に比べて、比較的年齢層の高かった応募者たちだが、それでも、アニメ・ゲームの影響を多大に受けていることがわかった。アニメ・ゲームの映像がもたらすおもしろさと、文章を通じて感じるおもしろさは根本的に違う。そこが物語を作る難しさであるが、悪戦苦闘を超えたときに、見たことのない世界へ読者を誘い、心底からどきどき・わくわくの醍醐味を体験させるのだ。そうした傑作が出てくることを選考委員は期待している。

さて、第一次選考は、例年どおり全ての作品を対象に行われた。次の9作品が通過した。

「風・魔」 市川正純
「ペンギンの水平線」 山木麗子
「飛翔の村」 西村友里
「サルガミ」 泉田もと
「夢渡り」 天城れい
「カッパの詫び状」 七海富久子
「夏至祭」 鷺坂ひなこ
「龍の赤ん坊にフカシギの花を」 可西氷穏
「百花怪談あやしの火」 三木聖子

この9作品を対象に第二次選考を行った。その結果、次の6作品が最終選考に残り、最終選考会で討議された。

「ペンギンの水平線」 山木麗子
「飛翔の村」 西村友里
「カッパの詫び状」 七海富久子
「夏至祭」 鷺坂ひなこ
「龍の赤ん坊にフカシギの花を」 可西氷穏
「百花怪談あやしの火」 三木聖子

最終選考に入る前に、二次選考を通過できなかった3作品について、一つずつ作品を検証した。

全体的に「オリジナリティのなさ」を突かれるものが多かった。似たようなアニメや、既存の読み物を想起させるものが目立った。この段階までくる応募者たちは、一般的には「書ける」「うまい」部類に入る人たちだろう。でも、厳しいようだが、それだけでは最終選考に残ることはできない。ましてや単行本として世に出すことはできない。もう一山超えないと一人前の「作品」と認めることができないのである。もう一段飛躍するために必要なことは何か。それは、読者の期待をいい意味で裏切るようなものを書くこと。「思ったとおりの結末」では読者は納得しない。そのためには、子どもたちが熱中するような本を5、6冊読んで、その感じを自分で掴むことをお勧めする。既存のアイデアを使う場合は、自分なりのオリジナリティをつけ加える意識が必須である。また、「これはだれもやっていない」というアイデアを積極的に見つけてほしい。残念ながら、最近の応募者には、その点でルーズな人が多いように思う。

最終選考開始の前に、「夏至祭」についてのある問題が話し合われた。ここまで勝ち残った作品ではあるが、応募規定枚数の200枚を大幅にオーバーしているし、読者対象グレードも応募規定よりはるかに高い。残念だが、最終選考の議論から外すということになった。

「ペンギンの水平線」 山木麗子 ペンギンがユニークだが、冒険性が弱い。ストーリーもありきたりという評価だった。
ペンギンも含めて、出てくる登場人物は皆よく理屈を言うが、その場限りだ。もっと一貫した構造、ルールがほしい。場面、場面は胸に迫るところもある。ペンギンの話しかたもポイントは高い。しかし、いわば鉄筋コンクリートの中に鉄筋が入っていない状態なのである。一見それらしいが、実際は住めない映画のセットのように思える。読みやすい文章で、よく書けているので非常に惜しい。

「飛翔の村」 西村友里 物語としてわかりやすいし、主人公の女の子が一生懸命戦うあたりは好感度が高そうだ。本来弱い人間が変身するあたりもカタルシスがある。ストーリーも展開が速くて快い。作者は小学校の先生をされているらしいが、職業で培われたような説得力がある。ただ気になるのは、主人公の育ての母といってもいいほど大事な叔母が退院したのに、二ヶ月も会いにいっていなかったというところ。冷たすぎないだろうか。それがずっと気になった。またあの世とこの世の境にある狭間村の存在にやや無理がある。そうした細かいところは目につくが、全体的にはよくできているといえる。

「カッパの詫び状」 七海富久子 ストーリーが単純で饒舌すぎる感がある。無意味なドタバタが延々と続いていく。ただ笑わせるだけでなく、いろいろと深化させてほしい。河童もこれまでの常識的なイメージどおりである。もっとオリジナリティを加えてほしい。そして、場面を増やし、全体的にバラエティを持たせたい。また、ドタバタの料理の仕方も古典的過ぎる。一考を要するだろう。

「龍の赤ん坊にフカシギの花を」 可西氷穏 オリジナリティがある作品だ。これぞ「フィクション」という異世界を描いている。しかし構築は見事でよくできているが、若干、入りにくい難がある。この異世界は異世界のなかにもう一つの異世界が現れるタイプである。ややゲーム的で、場面・場面をつなげている感じを受ける。いわば独創的なアイデアを積み重ねた作品だが、成功しているとはいいにくい。もう少し場面と場面をなめらかにつなげ、一つの物語として昇華させられればよかっただろう。

「百花怪談あやしの火」 三木聖子 高度な霊能者なのに弱虫で、運動も苦手の主人公は、等身大で親近感がある。多くの読者が共感を覚えるだろう。日本的な雰囲気、土着な匂いがいい。概して、妖怪を扱った作品は、好きな人にはわかるけど、そうでもない人にはピンとこないことが多かった。しかし、この作品は、読者を主人公と一緒に学ばせるフォローをしているのが好ましい。ともかくメリハリが利いて読みやすいところが好感度を高めている。

以上、最終選考会で各作品について討議を重ねた結果、発表のとおり、満場一致で「百花怪談あやしの火」が大賞を、「ペンギンの水平線」「飛翔の村」「龍の赤ん坊にフカシギの花を」の3作品が佳作を受賞することになった。

来年でこの賞も丸10年を迎える。すでに、大賞・佳作受賞者からは、現在、作家として大活躍している人も出ているのがなにより心強い。読者を心からわくわくさせる冒険心あふれる作品を生み出す書き手が続々と現れてくるのを願ってやまない。

2010年 12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

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 第8回選考経過 - 2014.12.24

第8回を迎えたジュニア冒険大賞に、今年は99通の応募原稿が寄せられた。これは過去最高の第3回とならぶ数である。今年の特徴としては、学校怪談や妖怪などをテーマとして扱ったものが多く見受けられたことである。毎年そういったジャンルの応募作品はやってくるが、今年とくに目立つのは昨年の大賞受賞作品の影響かとも思われる。 また、今までになかった異色の作品が残ってきており、多様さを実感する年となった。そして毛色が変わった作品を読んでいくにつれ、この賞にふさわしい作品とは一体何か、という根本的な問いが出てきた。まず「冒険」について議論のなかから導き出されたのは、SFやファンタジーなどの空想や未知の世界だけでなく日常の生活にも「冒険」の世界が存在するという認識だった。つまり日常から一歩飛躍したところに、新しい冒険が見つかる可能性があるのだ。冒険の世界は広く深く未知の部分が多い。そこから「驚いてひっくり返るような作品」が生まれてくることを、選考委員は期待している。

さて、第一次選考は、例年どおり全ての作品を対象に行われた。次の11作品が通過した。

「タイム・ツーリスト ヒロの流され王伝説」 七篠評三
「ネコ神社においでよ!」 遠山裕子
「さばいばる タケル」 朱雀 遥
「海へ」 岸田 啓
「コクリの子」 深月ともみ
「ムームとモーモと仲間たち」 成美雄介
「とろけるジュースの秘密」 脇本博美
「SOS! 宇宙の迷子探しています」 廣瀬郁美
「グリーゼ宇宙学校」 森川成美
「ドロップ」 水越かおり
「妖気な五レンジャーと夏休み!」 高森美由紀

この11作品を対象に第二次選考を行った。その結果、次の五作品が最終選考に残り、最終選考会で討議された。

「ネコ神社においでよ!」 遠山裕子
「さばいばる タケル」 朱雀 遥
「コクリの子」 深月ともみ
「ムームとモーモと仲間たち」 成美雄介
「妖気な五レンジャーと夏休み!」 高森美由紀

最終選考に入る前に、二次選考を通過できなかった6作品について、一つずつ作品を検証した。
全体的に物語が定型的で、詰めの甘さが目立った。キャラクターの魅力不足も致命的だ。グレードの無視も困る。ジュニア冒険小説の場合、対象読者年齢を小学校高学年としている。それより極端に上だったり、下過ぎたりしたものがあった。

ともかく二百枚の物語の中に、一貫した流れがあり、キャラクターが光っているかどうかが、最終選考に残れるか残れないかの分れ道になる。今回は、どの作品も一応読者をひきつけて読ませる筆力はあるし、さらに専門的な知識を感じさせるものもあった。次のチャンレジを期待したい。

最終選考の対象となった五作品について、熱い議論がくりひろげられた。いわゆるジュニア冒険らしいものから、異色の作品まで、以下が各作品についての講評である。

「ネコ神社においでよ!」 遠山裕子
 昨年、一次選考を通過した遠山裕子氏の作品。物語は連作短編のような構成となっている。各編が続いているものもあれば、がらっと内容が変わるものもある。そのせいかわかりにくいところがある。全体をもう一度組み立てなおす必要があるだろう。キャラクターについても、中途半端なところがある。しかし、ネコの描き方は非常にうまく、ネコがからむと登場人物もいきいきとしている。また話にハートがあるのもよく、骨太なところも評価できる。来年またぜひがんばってほしい。

「さばいばる タケル」 朱雀 遥
SF的要素、戦い、遠征など、いわゆる冒険的要素が全くない異色の作品。両親が突然家を出ていってしまい、とり残された子どもが孤軍奮闘する様子が「日常を生き抜く冒険」のつもりなのだろうか。文章が達者でぐいぐいと読ませていくが、日常生活の描写が若干詳しすぎる。また、説明が多すぎる。設定も納得しがたい。ジュニア冒険にこういった方向性が出てくるのは歓迎しないわけではないが、やはりふつうのリアリズムの作品と一線を画してほしい。少年のキャラクターの設定についても、まともな冒険ができる、冒険心のある子だろうかという疑問をもった。ジュニア冒険作品においては、ふつうの子にも、なにか特色を持たせたい。

「コクリの子」 深月ともみ
昨年、佳作を受賞した深月ともみ氏の作品。選考委員全員が「よくできている」という評価を出した。少年と少女、二人の気持ちの純粋さが際立っている。読後感がとてもいい、という共通の意見が出た。キャラクターの心情が感じられて読後感がいいのは大事な要素である。この作品に一貫した流れがあることも大きい。読者を一つひとつ納得させながら読ませる丁寧さ、筆力がある。随所に絵になる場面が連続しているのもいい。色彩的な感覚も鋭い。異色のファンタジーとして推奨できる作品になるだろう。

「ムームとモーモと仲間たち」 成美雄介
ディズニーの動物アニメに似ているものがある。たがか外れているのがおもしろいが、子どもにはどうだろうか。映像と活字は違う。文字で描写されると、これほど賢いキャラクターならもっと違う行動と展開になるのではないかと思う。動物に人間を仮託して、それを童話のタッチで書こうとするから大変なのではないか。筆力はあるがくどくなってしまう。内面描写も違和感が出てしまう。また、登場人物をもう少し整理できたらという感じもする。ジュニア冒険のなかで新しい路線を開拓したい、という作者の意欲は十分に感じる。文章はしっかりしているし、描写もちゃんとしている。いっそのこと、ジュニア冒険の対象年齢より上をねらった小説を書く選択肢もあるのではないか。

「妖気な五レンジャーと夏休み!」 高森美由紀
作者はなかなか書ける人だ。ある意味、達者すぎる。会話だけで展開する場面、短いセンテンスも小気味よい。ジョーク交じりの会話もスピード感があって絶妙である。とにかく憎たらしいほど達者で、おもしろいと思うところ、読者が期待しているところをちゃんと押さえている。一方成長物語でもあって、登場人物のせりふにほろりとさせられるところがある。妖怪5人のキャラもいい。よくも悪くも漫画的、そこが気になった。

以上、最終選考会で各作品について討議を重ねた結果、発表のとおり、満場一致で「コクリの子」が大賞を、「妖気な五レンジャーの夏休み!」が佳作を受賞することになった。

選考委員から、「最終選考作品のレベルが上がってきている」という声が上がった。まだ今年で8回目のこの賞だが、大賞・佳作の受賞者から現在作家として活躍している人もすでに出てきている。これからの児童文学の担い手が、この賞から続々と現れてくることを願ってやまない。

2009年12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

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 第7回選考経過 - 2014.12.24

第7回を迎えたジュニア冒険小説大賞に、今年は83編の応募原稿が寄せられた。歴代でも2位の総数である。昨年からは約30編増加したこととなり、数年続いていた減少傾向に歯止めをかけることとなった。この応募数の増加理由を明確に分析することは難しいが、この賞が歴史を重ね、受賞作が世に出て評価をうけ、世間から認知される存在になりつつあるのであったら、これほどうれしいことはない。また、そうした流れの中で、今後の受賞作がベストセラー化したり、各種の新人賞を受けたりするようなことを願ってやまない。

今回の選考経過だが、応募数が増えると質が下がるという定説を覆し、例年に比べてレベル自体が上がっていると感じられたが、よく似た作品も見受けられた。応募作品にはぜひ、新人らしい型破りのものがほしい。思いつきの設定ではなく、自分の気持ちの中から出てきたものであってほしい。

さて、第一次選考は、例年どおり全ての作品を対象に行われた。11作品が通過した。

「地図屋を継いだ顛末のこと」 笛吹 やよい
「ぼくらが大人になる日まで」 深月 ともみ
「悪夢で逢いましょう」 さいか たすく
「目に映る全てのものが、食物に見えてきた」 フランク・鰤杜
「あまたの闇に流れる淡星」 遠山 裕子
「錬金術師はくもりのち晴れ」 里 洋子
「ランプとロープ」 在上 水悠
「夜猫夜話」 天城 れい
「はちみつドロップス」 星月 むく
「崩し屋リャンテ」 橘子庵
「七番目はここにいる」 如月 かずさ

この11作品を対象に第二次選考を行った。その結果、次の4作品が最終選考に残り、最終選考会で討議された。

「地図屋を継いだ顛末のこと」 笛吹 やよい
「ぼくらが大人になる日まで」 深月 ともみ
「夜猫夜話」 天城 れい
「七番目はここにいる」 如月 かずさ

選考に入る前に、二次選考を通過できなかった7作品について、1つずつ作品を検証した。

選考委員の一人が「アイデア、物語の展開、文章」を物語の3つの条件として挙げた。その観点からいうと、パターン化された物語であったり、説明不足であったり、話の展開が遅かったり、設定の詰めが甘かったりするものが7作品には多く見受けられた。

ユニークなアイデアで独特の世界観を創りあげ、スピード感あふれる展開で真のエンターテイメント作品を書き上げ、ぜひまた応募していただきたい。

最終選考の対象となった4作品は粒揃いで、各賞を選ぶにあたって、熱い議論がくりひろげられた。

以下が、各作品についての講評である。

「地図屋を継いだ顛末のこと」 笛吹 やよい
「地図屋」の仕事をしている伯父が道中倒れ、帰らぬ人となる。そこに実の娘と偽るスリの娘が現れて…という物語。

大人向けとしたらよく書けていると言えるが、子ども向けとしては難しいという声がまず上がった。オリジナルのアイデアは絶賛された。タイをそれとなくイメージした設定、展開の仕方、仕掛けなどもうまいと高評価だった。しかし、まだ十分に書きこなしていない面もある。特にラストはあっけない。主人公をもっと骨太にして、年齢を上げたほうがいいかもしれない。長編にしたり、アニメなど映像にしたらおもしろいだろうし、イメージする世界がはっきり見えてくるのではないか、という声もあった。ただし、作品自体が小学校高学年からが読者対象のこの賞向きではないのが非常に残念。これだけ書けるのなら、もっと冒険ができる。この設定を使って、世界を広げてほしいという期待が寄せられた。

「ぼくらが大人になる日まで」 深月 ともみ
ある小学校の鳥居には、子どもたちの願いをかなえる不思議な生き物が住みついているという伝説があった。そこで工事が行われることになり…という物語。

まず型どおりにしっかりできあがってはいるが、新味はないという意見が出された。しかし書き手の観点からいうと、最後まで息切れしないのがすごい。生徒と先生の会話が世相を反映していたり、話のもっていきかたがなかなかうまい。物語のなかの伝説も上手に作られている。鳥居の中にいる不思議な生き物のネーミングも「大きくなるにつれて忘れてしまう」という伝説のありかたもとてもいいという声も出された。よく読むと展開で「あれ?」と思うところはある。よく練られているが、最後の対決の場面がたわいないのが残念という声も聞かれた。

「夜猫夜話」 天城 れい
しゃべることができる不思議なネコとの交流で、少年が徐々に変わっていく物語。成長物語としてきちんと創りあげられているというのが全般的な評価だった。しかし、ネコの誘導で少年が空中を歩く場面で説明がない。ファンタジーだからこれでいいかな、とも思うが、「目が光るときには魔法の力が…」など約束事がほしい気はするという声が上がった。また、ラストにネコが死んでしまうことについても議論があった。成長物語では定説かもしれないが、「どこかで生きている」ことにして、ふっと消えて行方不明のままのほうがよかったというのが概ねの意見だった。物語の舞台として、鎌倉を意識させているところが少し鼻につくわりに、鎌倉の必然性は感じさせない。作品世界が意外と小さいという声もある。夏祭りの雰囲気もう少し描写だせればよかったのではないか。また、たこ焼き屋の主人のキャラクターをもっと親近感をもてるものにしたらおもしろかったという意見も出た。

「七番目はここにいる」 如月 かずさ
学校に伝わる物騒な七不思議の怪物が次々と現実に現れるようになり、その秘密を探るべく子どもたちが動き出す…という物語。

細かいところに文章の荒さはあるが、ストーリー展開が群を抜いてうまいと高評価を受けた。出だしに事件が起きて、伏線になっていること。消えたものをまた戻らせるラストの処理についても絶賛された。他には、ライトノベルによくある書き方で、勢いがいい。場面のイメージがとてもいい。絵がイメージできる。場面ごとにストーリーを終わらせている。アニメ的なカットを積み重ねていく感じがするという意見があった。ただし、タイトルへの若干の工夫がほしい。また、陰陽師が出てくるが、それに西洋魔術が対抗している(六芒星)のが少しおかしい。どうせ出すのなら、五芒星のほうがいいのではないか、という声も。全般的には、今後の作品に期待したい書き手、という評価だった。

以上、最終選考会で各作品について討議を重ねた結果、発表のとおり、「七番目はここにいる」が大賞を、「ぼくらが大人になる日まで」と「夜猫夜話」が佳作を受賞とすることになった。

物語に必要な三大要素は、「アイデア、展開、文章」というのが選考委員の一人が挙げた事柄であったが、公募作品には、その賞自体が求めているものに確実に応えることも必須であろう。すなわち、読者の年齢にふさわしい内容、キャラクター設定、文量などがジュニア冒険小説大賞向きかどうかが受賞に結びつく重要な要因となる。そういう意味では、今回惜しいと思われるものもたくさんあった。腕に磨きをかけて、ポイントを外さずに、ジュニア冒険小説大賞にふさわしい、たくさんの作品のご応募を期待したい。

2008年12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

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 第6回選考経過 - 2014.12.24

大賞 「滝まくらの君」牧野 礼
佳作 「泥濘城のモンスターとひとりぼっちのココ」石川宏千花

ジュニア冒険小説大賞も今年で第六回を迎えたが、今回の応募総数は五十四点、残念ながら三年連続の減少となった。
応募作品の一覧を拝見していると、見知った名前が目につく。二度三度と応募してくださるとお名前は、自然と頭に残るものだ。しかしいつの回も、初めて見るお名前が圧倒的に多い。応募数が減っている原因はさまざまあるのだろうが、一度原稿を送ってみて選考経過のどこにも自分の名前が見られないと、それでもう諦めてしまうという人が多いのかもしれない。

主催者側は、最終的に有望な新人、魅力的な作品が得られればよいのであって、そのことに応募総数の多寡は直接の関係はないのだが、それでも数が減っているのは寂しい。逆に、応募する方たちにとって応募数の減少は、チャンスといえなくもないが……。

さて、第一次選考は例年どおり全ての作品を対象に行われた。昨年同数の次の九作品が第一次を通過した。

「桃と青〜ツヨクなるための冒険」川上あゆみ
「なべの中で世界はおどる」七野悠己
「泥濘城のモンスターとひとりぼっちのココ」石川宏千花
「滝まくらの君」牧野 礼
「お絵かき教室の占い師」松山千夏
「マイケル・ジョージの冒険」宗谷つとむ
「アディテの邪伏記」橘子庵
「革命の朝」切波大貴
「眠れるBOYのミント」丸山美幸

この九作品を対象に第二次選考を行った。その結果、次の四作品が優秀作として最終選考に残り、最終選考会で討議された。

「なべの中で世界はおどる」七野悠己
「泥濘城のモンスターとひとりぼっちのココ」石川宏千花
「滝まくらの君」牧野 礼
「眠れるBOYのミント」丸山美幸

選考に入る前に、二次選考を通過できなかった五作品について、それぞれの長所と短所の確認が行われた。二次選考に残っただけに、どの作品も見所はあるのだが、テンポが悪い、重たい、救いがないなど、これ以上に進めない難点があった。人物像が浮かんでこない、ゲームの画面のようで小説になっていないなど、最近の応募作の多くに見られる傾向の指摘もあった。
最終選考の対象となった四作品は、それらの作品に比べ、魅力も上回り、致命的な瑕もなかった。
以下が各作品についての講評である。

「なべの中で世界はおどる」 古代中国奥地の小王国を舞台に国の運命が王子の料理の腕にゆだねられてゆくという物語。いま流行の料理人物語と国家の争乱の組み合わせという新しさが目をひき、おもしろく読ませたが、選考委員の評価は分かれた。ファンタジーとはいえ戦争と料理を同じ重さで扱ってよいのかという辛口の意見と、子どもにとってはわかりやすく、ファンタジーなのだからよいという意見であった。レシピや時代考証について信憑性を問う声、設定についてもやや中途半端な感じがするという意見もあった。

「泥濘城のモンスターとひとりぼっちのココ」 泥にすがたを隠した主人と心優しい召使の少女という、「美女と野獣」パターンの物語。 化け物と化した主人に魅力があった。召使の娘の田舎なまりなども含めて、類型的ではあるがよくできているという評価であった。その上で、後半に結論を急いだ観があり、前半がよかっただけに構成に難ありというところは選考委員の意見が一致した。丁寧に描かれたところと荒く書き飛ばされたところの差が目についた。

「滝まくらの君」 日本的古代王朝を舞台にした冒険ファンタジー。背伸びした言葉づかいは感じられるものの、二十三歳という年齢にしてはよく書けているという評価だった。登場するキャラクターの変化の扱いがやや単純で、扱い次第でもっとおもしろくできそうだという声もあった。この手のライトノベルではありがちで、読者の側にもそれを楽しむ向きもあるのだが、漢字表記とかな表記の書き方の不統一や凝った固有名詞の多用はやはり気になった。大きな世界の広がりがないのは残念だが、設定としてやむをえないだろうという意見もあった。

「眠れるBOYのミント」 他人の眠気をうばって商売をする睡魔、身近なところにいたその仲間と闘う男の子たちの物語。書きなれていて会話のやりとりが巧みという評価だったが、仕掛けがややこしくもっと単純でいい、おふざけが生っぽくこなれていないなどの意見が出された。やや低グレード向きの作品であった。科学的な意味での瑕も、一、二、指摘された。

以上、最終選考会で各作品について熱心に討議を重ねた結果、発表の通り、「滝まくらの君」が大賞を、「泥濘城のモンスターとひとりぼっちのココ」が佳作を受賞することとなった。

二〇〇枚近い作品を書き上げるのは並大抵の作業ではない。選に残れなかった人が、オホメの言葉の一つもなしに次の作品に取り掛かるのには、そうとうの情熱がいるだろう。これまでに、初めて書いた作品が本になったという人がいないわけではないが、物書きと呼ばれる人の多くは不安なままに地道な努力をかさねてデビューを迎えている。今回、選外という結果に終わった方たちも、一度や二度のチャレンジで諦めず、次回以後も応募を重ねてくださるよう願っている。

2007年12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

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 第5回選考経過 - 2014.12.24

本賞の応募締め切り1週間前になると、応募原稿の山は目に見えて高くなっていく。「今年もジュニア冒険小説大賞の季節がきたなと、選考委員も期待をこめて原稿の数々をながめるものだが、その賞も今年で5回目をむかえた。

今回の応募作品総数は58編で、昨年の第4回を下回り、残念ながら二年連続の減少となった。児童書も含め出版業界全体で文学賞の公募が増えていることや、各賞の締め切り時期との兼ね合いもあると考えられるが、やや寂しさが感じられた。さらに多くの応募作品を集められる賞となるべく、力のある書き手を見いだすよう尽力することを念頭に置きながら、選考に臨んだ。

第一次選考は、例年どおり全ての作品を対象に行った。応募総数に比例したのだろうか、今回は例年より少ない9作品の通過となった。

「瑠璃色の月の下で」    トオル金太郎
「山の火 水の月」       巣山ひろみ
「風の剣 アテルギの物語」   宮沢 一
「宇宙からきた留学生」      山本大介
「サティン・ローブ ユーラの冒険」                  浅見理恵
「人魚姫の騎士」         牧野 礼
「ぼくらの妖怪封じ」       香西美保
「月鏡」             森生千晶
「天人米蘭と燐の物語」      八坂まゆ

この9作品を対象に第二次選考を行い、次の六作品が優秀作として最終選考に残った。

「瑠璃色の月の下で」   トオル金太郎
「サティン・ローブ ユーラの冒険」                 浅見理恵
「人魚姫の騎士」        牧野 礼
「ぼくらの妖怪封じ」      香西美保
「月鏡」            森生千晶
「天人米蘭と燐の物語」     八坂まゆ

最終選考に臨んで選考委員たちが一致して述べたのは、「今年は物語が小ぶりの作品が多く、これだという判断をくだしにくい」という感想である。各回ごとに新しい切り口での冒険小説を選出してきたつもりではあるが、過去4回の大賞作品の傾向を見て、応募者の指向がやや固定化してきた可能性もあるだろう。そのためか、選考委員それぞれの各作品への評価も、例年に比べると少々辛口であった。

以下が各作品の講評である。

「瑠璃色の月の下で」

これはSFとファンタジーの要素が相半ばする作品という印象であった。月世界の化け物との戦いの場面はスピード感があっておもしろく、楽しんで読ませる。ただし人物名などのカタカナ表記と漢字の言葉の使い方に規則性や統一性が感じられず、物語の流れも勢いにまかせるあまり少々読者からはなれてしまった。アニメにしたらおもしろいのかもしれない、読者年齢を考慮していない、との声もあった。

「サティン・ローブ ユーラの冒険」

最終選考に残った作品の中では、小ぶりながら物語がよくまとまり、文章がしっかり書けているファンタジー作品であった。登場人物のひとりひとりが話の中にきちんと組みこまれて、動きに無駄がなく、キャラクターだてもおもしろい。名前にも統一性がある。ただ一度出てきた人物を、読者が正確に覚えているものとして書き急いでいる点は残念であった。また、若干エピソードのくり返しが気になるが、概ね好評であった。

「人魚姫の騎士」

ストーリーはおもしろかったが、文章にちぐはぐなところがあり、まだ自分の文体が確立できていない、背のびした印象も残る。物語の視点が都合によって移りがちな点も気になった。登場人物が多く、世界を広げすぎて手に負えなくなった感じである。オズの魔法使いを連想させたが、もう少し洗練が必要であろう。それでも今後に可能性を感じさせた作品であった。

「ぼくらの妖怪封じ」  作品のプロットがしっかりしており、文章も過不足なくまとまっている。?時間?の問題などに若干のキズは見られるが、設定に無理がなく、登場人物も出たきりということがない。悪人を登場させずに物語を構成したことも、ありきたりでない味わいをつくりだしていた。真相があばかれるときにもっと盛り上げられるような気もしたが、かといって読後感は悪くなかった。

「月鏡」

物語自体は非常におもしろい作品である。中国神話についての知識も深く豊富で、作品の質が高められ素晴らしかった。ただ、残念ながら本賞の掲げるジュニア冒険小説ではなく、大人向けの仕上がりであった。大人の読者でも読みこなすのは中々だろう、と選考委員をうならせるほど、巧みな文章と構成力である。今後の執筆活動に期待したい。

「天人米蘭と燐の物語」

世界観がおもしろく、作者の知識の深さも感じられる作品。だが原稿枚数のわりに動きが少なく、説明的な部分が多いので、エンターテインメントとしては物足りない印象をもつ。設定をうまくいかし、環境問題をより深め、もっとやさしく書くと成功したかもしれない。小学生や中学生にわかりやすく書くことを考慮してもらいたかった。

このように最終選考会で各作品が討議された結果、「ぼくらの妖怪封じ」が大賞を、「サティン・ローブ ユーラの冒険」が佳作を受賞する運びとなった。「ぼくらの妖怪封じ」は、作品の構成力、完成度で評価が高く、満場一致で大賞受賞が決まった。佳作の作品は、大賞には一歩及ばずというところだが、構成力のあるおもしろい作品だと評価された。

近年の傾向として、パソコンの文字変換機能のためか、難解な漢字を多用し、物語世界を奥深くみせようとする作品が多く見られる。多少の背のびはわからないでもないが、書き手の操れる言葉で、読者の子どもたちが夢中になる物語を生み出すことが一番大切だということを忘れずにいてもらいたい。

本賞は、創設以来、小学生から年配の方まで幅広い年齢の方々に応募していただいている。作品のおもしろさは年齢によるものではない。次回も、児童文学界を盛り上げるような心躍る冒険物語の誕生を期待したい。

2006年12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

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 第4回選考経過 - 2014.12.24

2002年からはじまった本賞も、今年で第4回をむかえることとなった。
今回の応募作品総数は、71編で、昨年の第3回をわずかに下回ったが、全体として作品のレベルは確実に上がってきているという手応えがあった。

第一次選考は、全ての作品を対象に行い、以下の十二作品を通過作とした。

「放課後クエスト」 大崎 梢
「水妖の森」 廣嶋玲子
「ヤドカリ 〜葛之葉町*怪獣綺譚」八坂まゆ
「透明人間ルゥとキィ」 おおのさとみ
「ホーリーバード」 村井貴紀
「エルドミア大陸記・ハルカナ国伝」三原島海
「光の島」 山本大介
「博士!」 安井由六
「光の国の首飾り エリーとその仲間達」山畠裕志
「七不思議デビュー」 黒島大助
「スパイス島の探偵」 熱田ミハル
「負けられないバトル」 星月むく

この12編を対象に第二次選考を行い、次の7作が優秀作として最終選考会にかけられることになった。

「水妖の森」 廣嶋玲子
「ヤドカリ 〜葛之葉町*怪獣綺譚」八坂まゆ
「エルドミア大陸記・ハルカナ国伝」三原島海
「光の島」 山本大介
「七不思議デビュー」 黒島大助
「スパイス島の探偵」 熱田ミハル
「負けられないバトル」 星月むく

最終選考の冒頭に、複数の選考委員より、各作品の完成度がおしなべて高くなっているという感想が改めてだされた。
そのなかでも、文章力に優れ、独自の世界がしっかりと構築されている「水妖の森」を、大賞に推す声が強かった。ところどころ難解な言葉がつかわれていたり、ウラーという怪物が支配する世界についての描写がやや単調と思われる部分など、いくつか欠点はあるものの、テンポ良く場面が展開し、読み手を物語に引き込む魅力は、最終候補に残った作品のなかでも随一と評価が高かった。主人公である少年自身の成長とともに、水妖という重要なキャラクターが、少年の影響をうけて変容し成長していく。「冒険と成長」の要素が二重の構造となっている点も、作品の味わいを深くしていると評価された。

「ヤドカリ〜葛之葉町*怪獣綺譚」つぎつぎに視点が変わっていく手法で書かれた作品。複数台のカメラでとらえた映像を順に切り替えていくような、映像的なおもしろさを生み出しており、アニメに慣れた若い読者に喜ばれる要素がありそうだという声があがった。ただし、視点の切り替えが、ときに作者の都合によって行われており、ともするとドタバタとした印象をもたらすあやうさがある。文学としてのおもしろさという点に、もっとこだわってもらいたかった。

「エルドミア大陸記・ハルカナ国伝」冒険小説の王道的な世界観でえがかれた作品。背後にもっと長大なストーリーがあることがうかがえて魅力的であった。しかし今回の作品では、その魅力が充分に伝わりきらず、ものたりない印象がのこった。また、主人公をふくむ登場人物の話し言葉の「軽さ」や、「アー」「うー」など、あいまいな表現について、違和感を覚えるという意見もあがった。会話文の品格を落とさずに、いかに「ユーモア」を成立させるかが課題となりそうだ。

「光の島」おもしろい物語なのだが、文章表現に説明調が目立つとの意見が多かった。とくに、プロローグが終わり第1章にはいってもあらすじ調のような書き方が続くのは、小説として如何なものかという厳しい意見があった。構成面においては、「海竜が、実は機械である」という最大のポイントが、早くにネタバレしている。そんなところにも不満がのこった。

「七不思議デビュー」発想のおもしろさと、会話文のうまさが光る作品。全体としては、文章の粗さが目立ち、未熟な点も多いが、定番の七不思議エピソードを、思いもつかない方法で組み合わせ、新しい妙味を生みだした感覚のユニークさは高く評価された。文章はいたずらに巧みをこらすのではなく、洗練を心がけると、読者が自然と共感をよせるものになるはずである。

「スパイス島の探偵」童話風の作品で、最終選考に残った作品の中では、もっとも対象とするグレードが低い。主人公が、6年生となっているが、それにしてはずいぶん幼く、印象としては、2、3年生程度にしか読み取れないという意見があった。悪者が登場しない。必ずそうでなくてはいけないということはないが、そのことをカバーする膨らみに欠け、やや物足りなさを覚える。

「負けられないバトル」文章の完成度が高く、平均的に良くできている。しかし、話がすっきりとまとまりすぎて、こじんまりとした印象をうけるという意見があった。また、前半部分は世界観についての説明がくどく感じられた。ただし「表の世界/裏の世界」という世界設定については、よくある「パラレルワールド」ものとひと味違う工夫が感じられた。

こうして大賞1編と佳作3編が選ばれた。偶然とはいえ、受賞作4編の作者がすべて20代であったことは、本賞のフレッシュな特質の表れだろう。またこれまで回を重ねて、大賞受賞作品にひとつの傾向がみえてきたようだが、これは選考委員会が意図したものではなく、あくまで偶然である。「冒険」の世界は広く深く、次にどんな傾向の作品が大賞をとるのかは誰にも予想できない。選考委員会としては、つねにフレッシュ(年齢とは関係なく)でユニークなエンターテインメントをもとめているのである。

2005年12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

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 第3回選考経過 - 2014.12.24

本賞の応募規定は、募集作品について、「冒険心に満ちあふれた物語であれば、ジャンルは問わない」とうたっている。第一回の大賞『ぼくらは月夜に鬼と舞う』は、現代の日本に暮らす男が、日常の世界と異界とを行き来しつつ、鬼と対決をする怪異物語。第二回の大賞作『ねこまた妖怪伝』は、さまざまな妖怪との戦いを通して育む妖猫ミィと超能力少女まなかの友情物語だ。二作とも岩崎書店から刊行されたが、イラストのタッチも異なり、読者はずいぶんと違った印象をうけただろう。
今年は三回目の公募となるが、今回の受賞作が刊行されると大賞受賞の本が三冊になり、応募者の方たちにも「ジュニア冒険小説大賞」がもとめているものが、見えてくるかも知れない。そんなことを考えながら選考に臨むことになった。
今回の応募作品総数は99編であった。前の二回をわずかではあるが上まわり増加傾向にある。
第一次選考はすべての作品を対象に行い、以下の12作品を通過作とした。

「勇気のカード」 山本ひろし
「天狗の夏休み」 森 和
「おにぎり兄弟」 村瀬継弥
「フィースーの盗んだ宝物」 堀江真紀
「世界を変えるもの」 萩下昭宏
「まぼろしの王国物語」 小浜ユリ
「龍神像は金にかがやく」 大崎 梢
「テオとムージー・グリムーン」 廣嶋玲子
「青き竜の伝説」 久保田香里
「ダークティアー 闇の裂け目」 花島秋司
「生態刑」 城宝理佳子
「神の座」 大森和哉

この一二編を対象に第二次選考を行い、次の六作品がふるい落とされた。
「おにぎり兄弟」はユニークな庶民物語なのだが時代考証が無視されている、「フィースーの盗んだ宝物」は物語にもっとメリハリと工夫がほしい、「世界を変えるもの」は会話中心につづられてアクションや情景描写がたりない、「テオとムージー・グリムーン」は殺しをかんたんに扱いすぎる、「ダークティアー 闇の裂け目」は物語性が弱く無駄な部分もみられる、「神の座」は観念的で小説としての魅力が弱い、などの点がマイナス評価となった。
この段階で姿を消した作品は、アイデア・文章力などいずれかの点にみるべきものがあるのだが、概して作者の思い入ればかりが先行して、読者への配慮と工夫に欠けていたようだ。
最終選考に残った六編は以下の通り。

「勇気のカード」 山本ひろし
「天狗の夏休み」 森 和
「まぼろしの王国物語」 小浜ユリ
「龍神像は金にかがやく」 大崎 梢
「青き竜の伝説」 久保田香里
「生態刑」 城宝理佳子

第二次選考を終った時点で、選考委員たちの間に、今年はこれで決まりだろうという思いを抱かせる、どの角度から見ても合格点の作品はなさそうだった。

「勇気のカード」 三枚のカードに導かれ、山の遭難・航空機事故・マンション火災と、次々に危険な場面に放りこまれていく物語。文章もよく、危機を脱出していくサバイバル場面は読者を引きこむ。ただし意外性が弱く、最後のまとめ方を工夫すればもっとおもしろくできそうな作品である。

「天狗の夏休み」あこがれの先生を救うために天狗の神通力を身につけて天狗と戦うといったお話。山の分校を舞台にしている。やや古風な生活童話タイプではあるが、話の進め方には好感がもてる。いまの子どもたちを引きつける魅力的な天狗を描いてほしかった。

「まぼろしの王国物語」小説の中の王国にまよいこんだ六年生の女の子が、王子を助けるために仲間とともに活躍するストーリー。姫や魔王の城、悪大臣がでてくるありがちなファンタジーだが、大きな破綻がなく主人公の造型も悪くない。

「龍神像は金にかがやく」子どもたちが伝説の村の宝を探しだし、宝をねらう何者かから守ろうとする話で、なぞときの展開が読者を引きつける。文章もよかった。人物も書き分けられ、よく動いている。ただ、結末をふくめ全体のまとまりにやや難があった。

「青き竜の伝説」倭の東征に材をえて、東国の村の少年と倭の王子との友情と成長を描いた物語。巫女と土地の精霊の竜との存在が物語をふくらませて読みごたえのある作品に仕上がっている。その反面、やや複雑で子どもたちには読みとりにくい恐れも感じられた。

「生態刑」家畜が力を持ち人間が収容所で管理される世界を描いている。タイトル通りのエコロジーのテーマをパラレルワールドに託した物語で、志は買えるのだが、子ども向きにはやや押しつけがましい観が否めなかった。

本賞は、単なる創作コンクールとはちがって、大賞となった作品を単行本として出版する新人賞だ。最終選考会では、物語のおもしろさ、作品の完成度、本賞にふさわしい作品かどうか、作者の将来性など、さまざまな角度から討議が行われた。
その結果、昨年佳作を受賞し、今回はそれ以上の完成度をみせてくれた久保田香里さんの「青き竜の伝説」が大賞に決まった。
佳作には、山本ひろしさんの「勇気のカード」、小浜ユリさんの「まぼろしの王国物語」、大崎梢さんの「龍神像は金にかがやく」が選ばれた。

第三回の大賞作は古代ファンタジーに決まった。結果的にジュニア冒険小説大賞の三本はそれぞれ毛色のちがう作品である。応募者はさらに迷うことになるのだろうか。要するに作品次第だ。主催者はこれからも子どもたちがワクワクしながら楽しめる冒険の物語を期待している。

2004年12月
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

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 第2回選考経過 - 2014.12.24

公募の発表から締切りまでには半年ほどの期間があるが、応募原稿のほとんどは締切り前の一週間に届く。選考委員会にとってのその一週間は、今回どれくらいの作品が送られてくるのだろうと、そのことを心配する日々となる。
「ジュニア冒険小説大賞」は今回が2回、スタートしたばかりだ。この賞が市民権を得るには、大賞をとって出版される本が、広く話題になってくれることしかない。そのためにも、胸おどらせる物語、冒険の魅力にあふれた物語が集まっていてほしいと祈りながら選考の時期をむかえた。
今回の応募作品総数は七七編であった。昨年の第1回をわずかに下回ったが、問題は集まった作品の質である。第一次選考はすべての作品を対象に行い、以下の11作品を通過作とした。

「神の満ちる夜」  芦名レイ
「わたわたりの木」  梶原幸恵
「闇姫魔鬼」  斉藤みゆき
「水神の舟」  久保田香里
「ねこまた妖怪伝」  藤野恵美
「牙の刻印」  吉里みしん
「おとぎ少女」  橘さくら
「嵐がやってくる」  齋藤たかえ
「0級の魔法使い」  田中宏昌
「不思議屋の主」  北条伶夜
「姫神町怪談・まひるのつきよ」  牛島慶子

この11編を第二次選考の対象として、最終選考に残す作品のしぼりこみを行った。
第1回の大賞受賞作(藤沢呼宇・作/目黒詔子・絵『ぼくらは月夜に鬼と舞う』)が出版されたことにより、これと似たような味わいの作品がふえていた。そして五作品が脱落した。それらの作品について、印象が暗く作品に躍動感が欠けている(「神の満ちる夜」)、殺人の扱いがゲーム的で創作の姿勢に疑問がある(「闇姫魔鬼」)、無駄な会話が多く感情移入がしにくい(「牙の刻印」)、話が未整理で構成に失敗している(「0級の魔法使い」)、独りよがりの感じで前段で抱かせた期待が継続しなかった(「不思議屋の主」)などの感想が聞かれた。
最終選考に残った六編は以下の通り。

「わたわたりの木」  梶原幸恵
「水神の舟」  久保田香里
「ねこまた妖怪伝」  藤野恵美
「おとぎ少女」  橘さくら
「嵐がやってくる」  齋藤たかえ
「姫神町怪談・まひるのつきよ」  牛島慶子

1次・2次をくぐりぬけてきた作品の完成度は前回以上だという感想が各委員から出された。

「わたわたりの木」 人間に種を植付けて生きようとする木と、木にねらわれた少女との闘いを描いたバイオ・ホラー。
話はおもしろく、気色悪くなりがちなテーマをうまく処理している。ただし、書き手がその世界に溺れすぎたのか、構成に難がある。もっと話を整理してほしかった。

「水神の舟」 舞台は平城京・難波宮という古代冒険ファンタジー。荷舟で身を立てていた少年と帝の娘が、不当に権力を握ろうとする者たちの手から、ふしぎな力をもつ瑞祥の亀を守る話。
物語はよくできていて、考証的にもきちんとしている。ただ、主人公の活躍の場がなく痛快な読み物となっていないところが、やや物足りない。

「ねこまた妖怪伝」 やさしい超能力少女と知り合ったさすらいの妖猫ミィ。人間世界の支配をたくらんで、魔境から妖怪たちを呼びだそうとするカラス天狗によって、窮地に追い込まれた一人と一匹の冒険物語だ。
ほかにもさまざまな妖怪・妖怪ハンターなどがにぎやかに登場するのだが、主人公のキャラはそれらに負けることなく魅力的に描かれている。ドラマ運びもうまい。グレードがやや低めであること、主人公が人間でないことなどが、論点となった。

「おとぎ少女」 1970年代を舞台にしたミステリー。超能力少女亜里紗が、他人の夢に入りこんだことなどをきっかけに、幽霊や魔物があらわれる奇怪な事件に巻きこまれていく。
達者な筆致でおもしろく読めるのだが、読者対象である子どもたちへの配慮にかけ、やや大人向けの物語になってしまった。なぜ時代を七〇年代に設定したのかもよくわからなかった。

「嵐がやってくる」 異界奉行妖怪改め方見習いの小学生嵐が、つくも神となった古書の妖怪をあいてに繰りひろげる闘いの物語。
単純なストーリー展開ではあるが、なかなかおもしろかった。ただし、全体にややゴタついた印象がある。構成がうまく決まっていないためだろう。やさしく書かれているようで、ときおり難解な言葉が無神経に使われているという、ちぐはぐなところもあった。

「姫神町怪談・まひるのつきよ」 予知能力をもつ真日琉が、病弱な双子の姉やクラスメイトとともに鬼との闘いを繰りひろげる劇画的なホラー・ミステリー。
話もよくできていておもしろく、最終選考まで残ってきた。だが規定枚数を大幅にオーバーしており、残念ながら内容にかかわりなく受賞対象からはずされることになった。

以上6作品について長時間にわたって討議をした結果、「ねこまた妖怪伝」が作品の完成度、楽しさ、おもしろさなどで万遍なく高い評価を受け、大賞に決定した。「水神の舟」と「嵐がやってくる」が佳作に選ばれた。
本賞の応募資格は、児童文学のジャンルで商業出版のない者となっていて、ジャンルが異なれば既成の作家でも大歓迎だ。ただし、原稿枚数の大幅なオーバーは選考対象外となる。
次回は質量ともに今回を上回る応募を期待したい。児童文学の世界に冒険小説の新風を巻き起こすのが選考委員一同の願いである。

2003年12月3日
ジュニア冒険小説大賞選考委員会

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選考経過

佳作 「ぼくの不思議なアルバイト」村上雅郁

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受賞の言葉

佳作

「ぼくの不思議なアルバイト」村上雅郁

【受賞の言葉】
 この物語は、作者と同じ名前の主人公が、数々の「不思議な」アルバイトをしていくというお話なのですが、本当のことを言うと、私は生まれてこの方一度しかアルバイトをしたことが有りません。しかも1か月くらいで辞めました。とんだ根性なしです。
そんな私が4年もあきらめずにお話を書き続け、そして賞までいただけるなんて、世の中わからないものです。不思議です。
選考委員の先生方、岩崎書店の皆さま、そして、いつも応援してくださっている仲間たちに心よりの感謝を申し上げます。

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選考経過

佳作 「ぼくとばあちゃんと桜の精」藍沢羽衣

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受賞の言葉

佳作

「ぼくとばあちゃんと桜の精」藍沢羽衣

【受賞の言葉】
私が生まれ育ったのは、見渡す限り田んぼの広がる小さな町で、家から一番近い隣町の書店に行くのでさえ、車で何十分もかかります。そんな私にとって、学校の図書室は、きらきら輝く宝石がたくさんつまった宝箱でした。その宝石を、いつか自分の手で作り出すことが夢でした。
このようなすばらしい賞をいただき、まだあの頃の夢に向かって歩み続けていてもいいのだと、そっと背中を押していただいた思いがいたします。
選考委員の先生方、岩崎書店のみなさまに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

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選考経過

大賞 「宇宙犬ハッチー」かわせ ひろし
佳作 「オサキ狩り」泉田もと

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受賞の言葉

大賞

宇宙犬ハッチー」かわせ ひろし

【受賞の言葉】
子どものころから宇宙が大好きで、自然とSF小説を読むようになりました。図書館の子どもの本のコーナーに、SFがずらっと並ぶ一角があり、そこを文字通り端から読んでいきました。図書館の片隅で、時間の経つのも気がつかず没頭していた幸せな時間。そのとき感じたわくわくが、今でも僕を動かしています。
この度このようなすばらしい賞をいただき、あのとき受け取ったものを今度は伝えていくのだと、また新しいわくわくした気持ちを感じています。本当にありがとうございました。

佳作

「オサキ狩り」泉田もと

【受賞の言葉】
小学生の時、「大きくなったら何になりたいか」という作文を書かせられたことがありました。その時は、なりたいものが全く思いつかず、苦し紛れに書いた職業が「小説家」でした。
もしかしたら、その頃から自分でも気がつかないうちに「書く事」への憧れのようなものが心の隅っこにあったのかもしれません。
子どもの手が離れ、自分の時間が少し持てるようになってからぽつりぽつりと「お話」を書くようになりました。
そのひとつが今回このようなすばらしい賞をいただき、心からうれしく思います。
選考委員の先生方、岩崎書店の皆さま、本当にありがとうございました。

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選考経過

大賞 「転校生は忍びのつかい」加部鈴子
佳作 「ペペ&ケルル どろぼう大作戦!」緒昵吉乃

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受賞の言葉

大賞

転校生は忍びのつかい」加部鈴子

【受賞の言葉】
ただ一人の読者のためにこの小説を書きました。優しいけれど気が弱く、小学校生活にストレスを感じている様子。母としてつい「男の子なんだから、それ位でくよくよしない!」と一喝する毎日ですが、一歩踏み出す勇気を持てば、きっと世界は少しだけ明るくなるよと伝えたかったのです。
思いがけずすばらしい賞をいただき夢の様です。たくさんの方に読んでもらい、少しでも明るい気持ちになってくれたら、こんなに幸せなことはありません。本当にありがとうございました。
転校生は忍びのつかい

佳作

「ペペ&ケルル どろぼう大作戦!」緒昵吉乃

【受賞の言葉】
顧みると、子どものころに読んだ本のタイトルをいくつも思い出せます。それらは今なお記憶の端っこにあって、ずっとなくなりません。子どもが本と出会うってそういうことなのかなと、子どもでなくなってから思いました。
ためになる大事なことって、怖いお話、悲しいお話、厳しいお話の中にあるのかもしれませんけど、やっぱり楽しいお話が好き。登場人物が元気いっぱい、がんばる楽しい物語が好き。だって、記憶にあるのは全部楽しい本ばかり。
そんな物語を作りたいと思って筆を執りました。パソコンのキーボードですが。
今回、そうして作ったお話に然るべき方々の評価を頂ける機会を得られ、とても嬉しいです。
ありがとうございました。

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選考経過

大賞 「花の巫女」(受賞時タイトル「百花怪談あやしの火」) 三木聖子
佳作 「ペンギンの水平線」 山木麗子
佳作 「飛翔の村」 西村友里
佳作 「龍の赤ん坊にフカシギの花を」 可西氷穏

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受賞の言葉

大賞

花の巫女(受賞時タイトル「百花怪談あやしの火」)三木聖子

【受賞の言葉】
子供の頃、友人とよく怪談をしたものでした。怪談を話すほうも聞くほうも、ちょっぴり恐くて、だけど不思議な物語にワクワクするような、そんな気持ちを再現したい。それが今回の作品を執筆する原動力となりました。
受賞の知らせを聞いたときは夢見心地でした。皆さんに何と感謝の言葉を述べたら良いのでしょう。とにかく書き続けることで、そういった気持ちも表していけたらと思います。この度は、まことにありがとうございました。
花の巫女

佳作

「ペンギンの水平線」 山木麗子

【受賞の言葉】
「おはなし」を書こう。そう思い立った時、最初に目に入ったのがジュニア冒険小説大賞でした。しかし百五十枚以上という枚数は途方もなく思え、とても私の手の届く賞ではない、と見送りました。それから一年。ただ一生懸命書き続け、やっと仕上げたのがこの「ペンギンの水平線」でした。自信もないまま一人で書き続けたものが、このように評価して頂けて、本当に嬉しいです。「本」というかたちに堪えられる作品が書けるように、これからも頑張っていきたいと思います。
選考委員の先生方、岩崎書店の皆さま、ありがとうございました。

佳作

「飛翔の村」 西村友里

【受賞の言葉】
「本当にカッコイイっていうのは、一生懸命やること、そして大切な人への優しい気持ちなんだよ。」
そんなメッセージを伝えたくて、このお話を書きました。
お説教にはフンって向こうを向く子どもたちも、お話には喜んで入って来ます。
一人でも多くの子どもたちに届く言葉を探して、これからも書き続けていきたいと思っています。
選考委員の先生方、岩崎書店の皆様、本当にありがとうございました。

佳作

「龍の赤ん坊にフカシギの花を」 可西氷穏

【受賞の言葉】
「佳作に決まりました」 このお知らせをいただいた瞬間、涙があふれそうになりました。学生時代の夢が諦めきれず、再び書き始めたものの、そろそろ潮時これで最後にしようと思っていた作品で、まさか賞と名の付くものをいただけるなんて……。
そして、何よりも、これからも小説を書いていく意欲と勇気という副賞をいただけたことに感謝、感謝です。なんだか、急にいろんな物語の構想が浮かんできて、毎日がわくわくする時間に変わってしまいました。本当にありがとうございます。


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選考経過

大賞 「百年の蝶」(受賞時タイトル「コクリの子」) 深月ともみ
佳作 「妖気な五レンジャーと夏休み!」 高森美由紀


受賞の言葉

大賞

百年の蝶(受賞時タイトル「コクリの子」) 深月ともみ

【受賞の言葉】
作家になりたいと思ったのは、中学生の時。初めて書いた物語を、友人がお世辞で褒めてくれたのを真に受けたのが、きっかけでした。
けれど、思い込みから始まった夢は、本気の夢に。書き続けていいのかと悩む日もありましたが、初めて「作家になる」と決意した素直でアホだった自分を、褒めてやりたいと思いました。
選考委員の先生方、岩崎書店の皆さま、すばらしい賞を与えてくださり、本当に嬉しいかぎりです。
より良い作品を創れるよう、これからも精進したいと思います。ありがとうございました。
百年の蝶

佳作

「妖気な五レンジャーと夏休み!」 高森美由紀

【受賞の言葉】
電話をいただいたときには半分気が遠くなりました。信じられませんでした。その後、じわじわと嬉しさが込み上げてきて、その嬉しいという気持に全身を素直にゆだねられました。
私にとって物語を書く、ということは自分を全てゆだねる心地いい行為です。書いていて楽しくて仕方ありません。
選考委員の先生方、編集部の皆様に読んでいただけ、感想まで持っていただけ、さらにはこのような煌めく賞までいただけて、夢のようです。これからはもっともっと楽しい作品を書けるように努力し、夢中になって書いていきたいと思います。感謝の気持ちと、嬉しさで一杯です。本当にありがとうございました。




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選考経過

大賞「七番目はここにいる」如月かずさ
佳作「ぼくらが大人になる日まで」深月ともみ
佳作「夜猫夜話」天城れい


大賞

ミステリアス・セブンスーー封印の七不思議」 如月かずさ

【受賞の言葉】
小学校時代に読んだ児童文学がきっかけで、自分もこんなおもしろい物語を書いてみたいと思うようになりました。その後素敵な本に出会うたびに、書きたい物語の形は探偵小説やライトノベルへと変わったりもしましたが、最近になってようやく実際に筆を執り、とにかくおもしろい物語をと精一杯力を注いで完成した作品は、自然と児童文学の形になりました。おそらく私にとっては児童文学が、自分の資質を最大限に発揮できる、ぴったりのジャンルなのだろうと考えています。

今回は思いがけず素晴らしい賞をいただき、本当にうれしいかぎりです。選考委員の先生方、そして岩崎書店の皆さま、若輩な私の作品を評価していただき、ありがとうございました。感謝の気持ちを胸に、これからも心躍る物語を創り続けていきたいと思います。
ミステリアス・セブンス

佳作

「ぼくらが大人になる日まで」 深月ともみ

【受賞の言葉】
初めて物語を書いたのは、中学三年の頃。授業で出された創作の課題がきっかけでした。その時、作品を読んでもらえる喜びを知り、以来、創作に打ち込むようになりました。
お電話をいただいた時、その時の記憶が蘇ってきました。選考委員の先生方、編集部の皆様に作品を読んでいただけた上、素敵な賞まで頂き、嬉しい気持ちでいっぱいです。
まだまだ未熟者ですが、「おもしろい」と言ってもらえる作品が描けるよう、精進したいと思います。ありがとうございました。

佳作

「夜猫夜話」 天城れい

【受賞の言葉】
物語を書き続けてきて良かったと、書くことの喜びを今ひしひしと感じています。作品を読んでくれる友人達が、私の支えであり、大きな原動力になってくれました。
自分の書いた作品が佳作受賞という形で評価していただけたことを、とても嬉しく思います。選考委員の先生方、編集部の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも、より良い物語を書いていけるよう、精進したいと思います。本当に、ありがとうございました。


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選考経過

大賞   「滝まくらの君」 牧野 礼
佳作   「泥濘城のモンスターとひとりぼっちのココ」 石川宏千花


大賞

滝まくらの君

滝まくらの君」 牧野 礼

【受賞の言葉】
ギリシャ神話や古事記、魔法使いが登場する民話、昔話が大好きな子どもでした。図書館で借りたファンタジーに感動して、「私もこんな物語が書きたい」「読んだ人に感動してもらえたなら、どんなにすてきだろう」と書き始めたのは、小学校高学年のころのこと。あれから十二、三年。これまでの人生の半分以上を、私は物語を書いて過ごしてきたことになります。 そして今回、夢の第一歩をかなえることができ、嬉しい気持ちでいっぱいです。

選考委員の先生方、岩崎書店の皆様に、心より御礼申し上げます。 私の描いた物語で、読者の方々に、小中学生の私が感じたように心ふるえる楽しさを味わっていただけますように。また、そのような物語を書き続けていけるよう、精進してまいります。ありがとうございました。

〈略歴〉
1983年生まれ。南山大学人文学部日本文化学科にて王朝文学を専攻、卒業。在学中、2004年に「健友館珠玉の童話大賞」長編部門佳作、2005年「創栄出版賞」最終選考。2006年、第30回「子とともにゆう&ゆう児童文学賞」長編部門入選。愛知県在住。

佳作

「泥濘城のモンスターとひとりぼっちのココ」
 石川宏千花

【受賞の言葉】
朝、ぱっと目が覚めたとき、早く昨日の夜の続きが書きたくて、あわてて机に向かってしまうような物語。 自分にとってもそういう物語でなければ、やっぱり、どこかへ旅立っていける作品にはならないのだなあと、今回の嬉しいお知らせをいただいたとき、あらためて思いました。 読んでもらえる、ということは、物語を書いている人間にとっては最高のごほうびです。

今回の応募に際しましては、選考委員の先生方、編集部の皆さまから、「読んでもらえた」というごほうびに加えて、佳作受賞というプレゼントまでいただけてしまいました。 少しずつでも前に進んでいくことでしか、お返しすることのできないものを与えていただいたと思っています。本当に、ありがとうございました。

〈略歴〉
1969年生まれ。女子美術大学芸術学部卒業。2007年、第48回講談社児童文学新人賞にて佳作を受賞。東京都在住。

<授賞式の模様>
さる4月11日(金)夜、東京・神楽坂の出版クラブにおいて、第25回福島正実記念SF童話賞・第6回ジュニア冒険小説大賞の授賞式が行われました。この二つの賞は、創作集団プロミネンスと岩崎書店が共同で開催しているものです。

総勢約50人ほど、こじんまりとした集まりですが、その素朴であたたかい雰囲気に「毎年くるけど、この授賞式がいちばん好き」と言ってくださる作家の方もいらっしゃいます。

まず、プロミネンスの中尾明先生より主催者代表のご挨拶をいただきました。
次に、福島正実記念SF童話賞・ジュニア冒険小説大賞の選考経過と賞状授与をそれぞれ石崎洋司先生、眉村卓先生より行っていただきました。時に厳しいお言葉をはさみつつも、これからの飛躍におおいに期待したい、との励ましを込めたお気持ちが伝わりました。

南山宏先生による乾杯のあとは、しばし歓談の時間。歴代の受賞者、プロミネンスの会員、児童書出版社の編集者たちが和やかに交流をしたり、今年度の受賞者へお祝いのご挨拶をしていました。

その後、前年度の受賞者から今年度の受賞者への花束贈呈が行われ、受賞者5人(大賞・佳作)がお一人ずつ、受賞の言葉を述べられました。福島賞大賞の友乃雪さんは、支えてくれた方々への感謝を、冒険小説大賞の牧野礼さんは、若さあふれる初々しい抱負を述べていらっしゃいました。大賞をとった作品で、デビューを飾るお二人にとっては、人生のターニングポイントともいえる瞬間だったでしょう。

最後に、天沼春樹先生よりご祝辞をいただいたあと、弊社編集長の津久井が閉会の辞を述べて、お開きとなりました。

決して絢爛豪華なパーティではないのですが、今年も新しい時代を担う作家の誕生を心よりお祝いする気持ちのこもった式になったのではないかと思います。次の式にどなたを会場にお迎えすることができるのか、とても楽しみです。

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大賞

ぼくらの妖怪封じ

ぼくらの妖怪封じ」香西美保

【受賞の言葉】
こどものころ、わくわくどきどきする話が大好きでした。十歳の頃のわたしが読みたいと思うものを。そう思って書いた作品で大賞をいただくことができて、とても嬉しいです。
選考委員の先生方、関係者の方々には心よりお礼申し上げます。
読んでくれた人はわくわくどきどきしてくれるでしょうか。不安半分、楽しみ半分です。楽しんでもらえる作品を書けるよう、これからもがんばっていきたいと思います。本当にありがとうございました。

佳作

サティン・ローブ

サティン・ローブ ユーラの冒険」浅見理恵

【受賞の言葉】
まだ少女だった頃、分厚いファンタジーの本を開くと、そこには未知の世界と心躍らせる冒険がぎっしりつまっていました。
自分もそんな物語が書きたい。なのにふくらむのは想いばかりで、物語はいつも言葉の向こうに隠れたままでした。けれど何度も書き直すうちに、主人公が出来事が、 勝手に動き出し物語を綴り始めたのです。
選考委員の諸先生方、岩崎書店の皆様、まだまだ未熟な作品に光を当てていただき、本当にありがとうございました。


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大賞

水妖の森」廣嶋玲子

(2006年4月 岩崎書店より刊行)【受賞の言葉】
子供の頃、夢中になって読んだ本は、大人になった今でも私の大切な宝物です。そんな作品を自分でも生み出したくて作家になることを決めましたが、どんなものが自分の持ち味なのか、探り当てるのに何年もかかりました。「これかな」という手応えを感じ始めたのは、本当にごく最近のことです。それだけに今回の受賞は格別嬉しいものです。しかも初めての大賞。連絡をいただいたときは、「これでやっとスタート地点に立てたのでは」と、ほっとしました。
この大きなチャンスを活かすべく、これからも「子供も大人も楽しめる作品を書く」をモットーにがんばっていきたいと思います。まだまだ未熟ではありますが、どうぞよろしくお願いします。最後に、大きなチャンスをくださった選考委員の先生方に本当に感謝いたします。ありがとうございました。

(廣嶋玲子略歴) 1981年横浜生まれ。横浜市立大学卒業。第27回パレットノベル大賞佳作。平成14年度国立劇場新作歌舞伎脚本奨励賞。第4回長編児童文学新人賞佳作。第18回フーコー短編小説賞優秀賞。
 
 

佳作

「ヤドカリ〜葛之葉町*怪獣綺譚」 八坂まゆ
「七不思議デビュー」 黒島大助
「負けられないバトル」 星月むく

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大賞

「青き竜の伝説 」久保田 香里

(2004年4月 岩崎書店より刊行)【受賞の言葉】
「人事を尽くして天命を待つ」
中学のときの寄せ書きに、隣の席の男子が気取って書いたこの言葉が、いま、しきりに思い出されます。いつものように不安と期待の中、結果を待ってはいたのですが、それでもなにやら静かな心もちでいられたのです。精一杯書いた作品だから、思い残すことはない、そんな気持ちでした。あれが人事を尽くして天命を待つだったのかも知れないと、今、思います。天は見ていてくれるのだ。喜びはじっくりとやってきました。
拙い作品に光をあててくださった選考の先生方に心よりお礼申し上げます。また、いつも支えてくれる家族と仲間たちに感謝を。
ところで、改めて読み返してみたら、まるで「人事」を尽くしていないようで。まだいくらでも直せそうです。
 
 

佳作

「勇気のカード」 山本 ひろし
「まぼろしの王国物語」 小浜ユリ
「龍神像は金にかがやく」 大崎 梢

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大賞

ねこまた妖怪伝」藤野 恵美

(2004年4月 岩崎書店より刊行)【受賞の言葉】
自分が児童文学を書くようになるなんて思ってもいませんでした。去年「福島正実記念SF童話賞」の福島さんのお名前に惹かれたという理由だけで作品を応募し、佳作をいただきました。その授賞式で子供の本に携わる素敵な方々とお会いすることができて、世界が広がりました。
家に帰って福島賞の歴代の受賞作品を読みました。すると面白い! 他にも色々と読んで、子供の本って面白いなあ、と気づきました。それに自分で書いていても、とても楽しいのです! 児童文学が自分には合っていたのだと思います。そこに福島さんが導いて下さったような気がします。これからも精進していきますので、よろしくお願いいたします。
 
 

佳作

「水神の舟」久保田 香里
「嵐がやってくる」齋藤たかえ

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大賞

ぼくらは月夜に鬼と舞う」 藤沢コウ

【受賞の言葉】
自分が児童文学を書くようになるなんて思ってもいませんでした。去年「福島正実記念SF童話賞」の福島さんのお名前に惹かれたという理由だけで作品を応募し、佳作をいただきました。その授賞式で子供の本に携わる素敵な方々とお会いすることができて、世界が広がりました。
家に帰って福島賞の歴代の受賞作品を読みました。すると面白い! 他にも色々と読んで、子供の本って面白いなあ、と気づきました。それに自分で書いていても、とても楽しいのです! 児童文学が自分には合っていたのだと思います。そこに福島さんが導いて下さったような気がします。これからも精進していきますので、よろしくお願いいたします。
 
 

佳作

「おうばがふところ」高原深雪

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実施回数受賞作応募総数選考経過
第15回 大賞 「おでん町探偵・Wナンシー」小路すず
佳作 「神サミット2016」 安井やくし
99編 選考経過を見る
第14回 大賞 「野ざらし語り」泉田もと
佳作 なし
104編 選考経過を見る
第13回 大賞作なし
佳作 「ぼくの不思議なアルバイト」村上雅郁
137編 選考経過を見る
第12回 大賞作なし
佳作 「ぼくとばあちゃんと桜の精」藍沢羽衣
105編 選考経過を見る
第11回 大賞 「宇宙犬ハッチー」かわせ ひろし
佳作 「オサキ狩り」泉田もと
118編 選考経過を見る
第10回 大賞 「転校生は忍びのつかい」加部鈴子
佳作 「ペペ&ケルル どろぼう大作戦!」緒昵吉乃
100編 選考経過を見る
第9回 大賞 「百花怪談あやしの火」 三木聖子
佳作 「ペンギンの水平線」 山木麗子
佳作 「飛翔の村」 西村友里
佳作 「龍の赤ん坊にフカシギの花を」 可西氷穏
85編 選考経過を見る
第8回 大賞 「コクリの子」深月ともみ
佳作 「妖気な五レンジャーと夏休み!」高森美由紀
99編 選考経過を見る
第7回 大賞 「ミステリアス・セブンスーー封印の七不思議」如月かずさ
佳作 「ぼくらが大人になる日まで」深月ともみ
佳作 「夜猫夜話」天城れい
83編 選考経過を見る
第6回 大賞 「滝まくらの君」牧野 礼
佳作 「泥濘城のモンスターとひとりぼっちのココ」石川宏千花
54編 選考経過を見る
第5回 大賞 「ぼくらの妖怪封じ」香西美保
佳作 「サティン・ローブユーラの冒険」浅見理恵
58編 選考経過を見る
第4回 大賞 「水妖の森」廣嶋玲子
佳作 「ヤドカリ〜葛之葉町*怪獣綺譚」八坂まゆ
佳作 「七不思議デビュー」黒島大助
佳作 「負けられないバトル」星月むく
71編 選考経過を見る
第3回 大賞 「青き竜の伝説」久保田 香里
佳作 「勇気のカード」 山本 ひろし
佳作 「まぼろしの王国物語」 小浜ユリ
佳作 「龍神像は金にかがやく」 大崎 梢
99編 選考経過を見る
第2回 大賞 「ねこまた妖怪伝」 藤野 恵美
佳作 「水神の舟」 久保田 香里
佳作 「嵐がやってくる」 齋藤たかえ
77編 選考経過を見る
第1回 大賞 「ぼくらは月夜に鬼と舞う」 藤沢コウ
入選 「おうばがふところ」 高原深雪
   

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