お知らせ(岩崎書店は、憲法第9条の改定に反対します)

岩崎書店代表取締役会長 岩崎 弘明

「君死にたまふことなかれ」
 このごろ、私はこの言葉が頭に浮かんでなりません。いうまでもなく、これは明治時代の歌人与謝野晶子が中国旅順で始まった日露戦争のときに、戦場に向かっている弟を想って詠んだ詩の題名です。

「君死にたまふことなかれ 旅順口包囲軍の中に在る弟を歎きて」

あゝをとうとよ、君を泣く、
君死にたまふことなかれ、
末に生れし君なれば
親のなさけはまさりしも、
親は刃(やいば)をにぎらせて
人を殺せとをしへしや、
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや。

 与謝野晶子は、「弟よ、戦場に行くな。親は人殺しをするために君を育てたわけではない」と、弟に、いや弟を戦地に往かせた開戦支持の世の中に反戦を訴えたのです。
 しかし晶子の反戦の願いは届かず、日本は日露戦争を終えてもなお軍備増強をつづけ、第一次世界大戦、中国、アジアや太平洋での15年に及ぶ戦争へと突き進んでいったのでした。

 中国・アメリカなど世界の多くの国を相手にした戦争に敗れたとき、日本は焦土と化していました。連合国軍の占領をうけることにもなりました。そんな中で、戦争放棄(第9条)をかかげ、平和憲法とも呼ばれることになる、現「日本国憲法」が生まれました。
 この憲法ができたとき(1946年11月3日)、当時の文部省は『あたらしい憲法のはなし』という小冊子を作成して、子どもたちに配りました。
 そこでは戦争を放棄したことを、

<これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは、「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません…(略)…けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです>

と、胸を張って子どもたちに説明しているのです。

 この平和憲法ができて69年が経過しました。そのあいだ日本は、戦力の放棄こそ守れなかったものの、戦闘によって人間の命を奪っていない世界でもまれな国でありつづけることができました。これまで、その平和主義に注目した世界の多くの人々が、この憲法は日本国民のみならず、世界・人類にとっても保持する必要性があると訴え続けています。

 しかし近年、この平和憲法を改悪しようとする動きが活発です。世界の多くの国々と同じように、日本を戦争のできる国にしたいと願う安倍晋三首相は、憲法第9条の改定にむけて突き進んできましたが、その実現が困難と見るや、一転、条文解釈の変更でこれを可能にしようと方針変更し、多くの国民・識者の反対の声を無視して、自衛隊が通常の軍隊と同様に外国で武力行使できる法律を成立させてしまいました。武力行使の既成事実を積み重ねることで条文改定に持ち込もうと狙っているのかも知れません。 
 法律の条文の解釈を枉げ、法に従わない為政者の前では、法は無に帰します。
 それでも、日本国憲法第9条は、それを保持する日本国民がノーベル平和賞の有力な候補になるほど世界の貴重な財産であることに変わりはありません。わたしたちは憲法第9条を改悪から守り続けましょう。為政者はいずれ交代します。国民の努力によって交代させることができます。憲法にもとづいた政治に戻すことが可能なのです。

 平和憲法を保持するのは決して容易ではありません。争いは人間という生物の本来の姿からすると抑えられない性向かもしれないからです。世界各地で戦争が止まず、日本の周囲にも紛争の火種はあります。平和憲法さえあれば平和が保証されるというわけではないことも認識しています。
 でも、日本国民は、今日まで70年近くにわたってこの平和憲法を守ることができました。これにより日本国民のみならず、世界の人々に “未来への大きな希望”を与えています。与謝野晶子が、そしてわたしたちの祖父や祖母が、望んでも手にできなかった希望の拠りどころを、今ここで失うことはできません。

 おとうさん、おかあさん。みなさんは、あなたの息子や娘が兵士となって人を殺す、そんな未来をのぞんでいますか。そんなつもりで子どもを育てている親はいないでしょう。
 児童図書出版社に働く我々も、自分たちが作った本の大切な読者である子どもたちの将来に幸あれと、さらに子どもたちが戦場に行き、加害者になったり被害者になったりする未来がこないようにと願って出版活動をつづけているのです。
 みんなで、交戦権を認めず永久に戦争を放棄することを謳った平和憲法を守っていきましょう。
 岩崎書店は全力でその姿勢を貫きたいと思います。

以上

イラスト:©北原明日香

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